専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

「ユニフォームが真っ黒になるまで」のノックはもう古い?昨季チーム97失策のヤクルトが取り組む特守とは?

山本祐香

2020.02.14

一塁手として同学年の森岡良介コーチからのノックを受ける坂口智隆。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

一塁手として同学年の森岡良介コーチからのノックを受ける坂口智隆。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 沖縄県浦添市で行われているヤクルト1軍キャンプは、2月13日に第3クールを終えた。

 今クールは、ゲームノックなどのより実戦を意識した練習メニューをこなし、12日には韓国プロ野球チーム・サムスンライオンズとの練習試合も行った。また、全体練習のあとには前クールに続き、コーチの指示を受けた選手が特守や特打で汗を流しレベルアップを図った。

 内野手の特守と言えば、ユニフォームが真っ黒になるまで選手が打球に飛び込み続ける印象が強い。例年のヤクルトキャンプでも、コーチの終了の声と共に倒れこむ選手へスタンドから労いの大きな拍手が送られるのがいつもの光景だった。

 だが、今年の特守は例年とは違い選手のユニフォームもそれほど汚れず、終了後に倒れこむ姿も見られない。

 森岡良介内野守備走塁コーチが打つノックは、バウンドこそ難しい球もあるが、1球1球が丁寧で基本的に彼らが足を運べば届く範囲に収まるものが多い。時間も2度の休憩を挟むなど3、40分程度だ。

 その意図について、森岡コーチはこう話す。

「守備範囲を広げたり、球際を強くすることも大切ですが、去年は捕れる球を捕れなくて投手に迷惑をかけたので、そういう球を確実に捕れるようにすることに重点を置いています。それに、守備練習ってしんどいじゃないですか。だから、ある程度時間を決めてやった方が選手はちゃんと動くんですよね。しっかり明確な目標、意識を持ってやることが大事です」
 
 昨季、最下位に沈んだヤクルトは、リーグ2位の656得点を大きく上回る、リーグワーストの739失点を喫してしまった。チーム防御率4.78と投手陣の踏ん張りも足りなかったが、リーグワースト2位の97失策、阪神と並びワースト1位の守備率.982と、捕るべき球を捕れなかったことも失点の大きな要因だった。

 それを踏まえて、この春は、改めて基礎をしっかりと体に覚えさせることを選んだ。

 特守の間には「全身グローブ」「ゴキブリなみに粘れ」などの言葉も飛び交った。森岡コーチが発するこの独特なワードを選手たちも笑いながら繰り返し、良い雰囲気の中で1球1球動きを確認していた。

 第3クールは、太田賢吾と吉田大成、廣岡大志と坂口智隆というペアで特守を受けていたが、若手3人はもちろん、プロ18年目のベテラン坂口も森岡コーチのアドバイスに真剣に耳を傾けていた。

 坂口は外野手として4度のゴールデングラブ賞にも輝いた名手だが、チーム事情もあり2018年から一塁守備にも挑戦している。同年は、一塁手として98試合、外野手として71試合に出場したが、19年は、死球による左手親指骨折などの影響もあり、一塁手として10試合、外野手として9試合の出場にとどまった。

 一塁守備に挑戦して3年目になるが、「ど素人」という坂口は「毎試合びくびくしています。送球も外野のときには投げない距離なので難しいですし、なんせ距離が近いから本当に怖いです」と、いまだに拭えていない恐怖心を語る。

 それを克服するためにも、森岡コーチの特守で基礎を学ぶ。

「他の内野手よりはレベルを下げて、基本から教えてもらっています。ど素人なんで、本当に簡単なことから習っていかないと。何かを飛ばして急にうまくなることはないので、そういうところを普段から意識してやろうと思っています。バッティングにしろ、守備にしろ、ひとつでもうまくなりたい。今の時期は、それがしっかりアピールに繋がってくれればいいなと思います」

 若手もベテランも、しのぎを削る春季キャンプ。特守でさらなる守備力アップを狙う。

文●山本祐香(タレント・スポーツライター)

【沖縄キャンプPHOTO】ヤクルトスワローズ|ファンから拍手が沸き起こる好プレーの連続!ヤクルトが充実した練習を実施!
【著者プロフィール】
やまもと・ゆうか/タレント活動をする傍ら、愛して止まない野球の“現場の声”を自ら届けるため、2015年よりライターとしても活動。主に日本のアマチュア野球を取材し、『スポチュニティ』などウェブ媒体を中心に執筆している。
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号