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レッドソックスに遊撃手”ジーター”が加入!?レジェンドの名を持つ21歳のプロスペクトは来季にもメジャーデビューか

宇根夏樹

2020.02.23

ベッツ、プライスとの交換でレッドソックスに加入したジーター・ダウンズのファーストネームは、ライバル球団ヤンキースで活躍したデレク・ジーターに由来する。(C)Getty Images

 2月10日に成立した大型トレードで、レッドソックスはムーキー・ベッツとデビッド・プライスを放出し、交換にドジャースから3人の若手を獲得した。ベッツに代わってライトを守ることになるアレックス・バーデュゴにはすでに3年のメジャー経験があるが、他の2人はまだメジャーデビューしていない。彼らの名前が多くのファンに知られるようになるのは、順調にいっても来シーズン以降だろう。

 けれども、そのうちの一方は、すでに広く名が知られている。21歳の遊撃手、ジーター・ダウンズだ。1998年7月27日にコロンビアで生まれた彼のファーストネームは、先頃、殿堂入りが決まったデレク・ジーター(現マーリンズCEO)に由来する。当時、デレク・ジーターはメジャー4年目で、この年は初のオールスター・ゲーム出場を果たしている。

 ジーターといえば、95年から2014年までの20年間をヤンキースひと筋でプレーし、キャプテンとしてチームを5度の世界一へ導いた球団史上有数のスーパースターだ。オールスター出場は実に14度を数え、ゴールドグラブ賞とシルバースラッガー賞もそれぞれ5回ずつ受賞。11年には史上28人目の通算3000安打を達成し、今年1月には資格1年目にして殿堂入りも果たした。
 
 そんなヤンキースの象徴的存在である"ジーター"の名を持つダウンズが、よりによって宿敵レッドソックスに加入したのだから面白い。両チームの因縁は1919年にレッドソックスが、ベーブ・ルースをヤンキースへトレードで放出したことから始まっている。ルースはヤンキースに移ってから驚異的なペースで本塁打を量産して人気を博し、チームも全米一の強豪人気球団へと上り詰めた。

 一方それまで5度も世界一になっていたレッドソックスは、ルースの放出以降、頂点から久しく遠ざかってしまった。ルースの愛称から"バンビーノの呪い"と名付けられたこの現象は、04年に86年ぶりの世界一を達成するまでボストンのファンを苦しめ続けた。ヤンキースに対する憎悪の念は、呪いが解かれた今でも消えてはいない。

 このような経緯から、"ジーター"の名に複雑な思いを抱くレッドソックスファンもいるかもしれないが、ダウンズは才能あるプロスペクトだ。17年のドラフトで1巡目・全体32位指名でプロ入りして以降、順調に成長を続け、昨年はA+と2A合計で24本塁打24盗塁の20-20を達成。早ければ来季にはメジャーデビューを果たすとみられており、いずれは「レッドソックスの正遊撃手ジーター」として、フェンウェイ・パークに世界一をもたらす日が来るかもしれない。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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