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MLB

今季からロースター枠が1人増えて26人に。代打・代走のスペシャリストに要注目!?

宇根夏樹

2020.02.24

ドジャースとマイナー契約を交わしたゴアは、“代走のスペシャリスト”として相手バッテリーにプレッシャーを与えることができる存在だ。 (C)Getty Images

ドジャースとマイナー契約を交わしたゴアは、“代走のスペシャリスト”として相手バッテリーにプレッシャーを与えることができる存在だ。 (C)Getty Images

 昨シーズンまで、メジャーの試合に出場できるアクティブ・ロースターの人数は25人だった(8月31日までのレギュラーシーズンとポストシーズン。9月1日以降のレギュラーシーズンは40人)。その内訳は、投手13人と野手12人が多かった。それが、今シーズンからは26人に増える(9月1日以降は28人)。そのうち、投手は多くても13人という新たな決まり(28人の場合は14人)もあるので、26人目は野手が入り、投手も野手も13人ずつになるだろう。

 単純に控え野手を1人追加するだけでなく、代打専門あるいは代走専門の選手をロースターに入れる方法もありそうだ。

 代打をメインとする選手は過去にもいたが、彼らは守備にもついた。例えば、イチローは2017年に、マーリンズで代打として109打席に立った。これは、代打のシーズン最多打席だ。だが、外野の守備についたのも33試合。そのうちの7試合は、代打として出場後に外野を守った。

 一方、今シーズンから増える26人目を、従来のロースターには存在しなかったプラスαとして考えると、まったく守れなくても構わない。守備固めに起用する選手は他にいるのだから、代打として結果を残せばいい。毎試合のように打席に立ち、イチローの記録だけでなく、代打安打や代打本塁打のシーズン記録を塗り替える打者が出てきてもおかしくない。
 
 代打安打のシーズン記録はジョン・バンダーウォル(1995年/ロッキーズ)の28本、代打本塁打はデーブ・ハンセン(00年/ドジャース)とクレイグ・ウィルソン(01年/パイレーツ)の7本だ。3人とも、そのシーズンに15試合以上で守備についた。ハンセンは98年に阪神でプレーし、そのシーズンは主に三塁を守った。ちなみに、17年のイチローは代打で27安打、1本塁打だった。

 26人目を代走専門の選手とする場合も、考え方は同じだ。打てずに出塁できなくても、走者としてスピードを発揮すればいい。こちらは代打専門と違い、守備要員としても使える。俊足であれば、基本的に広範囲をカバーできる。

 実際、ドジャースはそう目論んでいるのかもしれない。2月半ばに、テランス・ゴアとマイナー契約を交わしている。ゴアはメジャー6年で100試合に出場し、そのうちの61試合は代走として起用された。40盗塁に対して失敗9度、成功率81.6%は極めて高い数値ではないが、“代走のスペシャリスト”として知られるゴアが塁上にいるだけで、相手バッテリーにプレッシャーを与えることができる。実際、16年4月10日の対ツインズ戦で延長10回に代走で出場した際には、けん制悪送球とワイルドピッチを相次いで誘発してサヨナラのホームを踏んだ。

 このようにロースター枠が1つ増えるだけで、取りうる戦術はいくつも増える。今シーズンは代打や代走のスペシャリストの活躍にも要注目だ。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
 
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