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【担当記者が見た大谷翔平】「人はそれぞれ違う」。佐々木朗希へのコメントから浮かび上がる大谷ならではの“柔軟思考”

斎藤庸裕

2020.04.29

高校時代から剛速球右腕として大きな注目を浴び、しかも岩手出身。佐々木(左)と大谷(右)には共通点が多い。(写真)THE DIGEST、Getty Images

「かくあるべき」ではなく、柔軟に、個性があっていい。大谷翔平の発言からそう感じることが多い。アリゾナで行われていた今春キャンプの囲み取材でのこと。プロ入りしたロッテの大物ルーキー佐々木朗希投手へ送る助言について、大谷は「個人個人違うと思いますし、その人にはその人の悩みや課題があると思うので、僕からっていうのは特に何もないと思います。頑張ってほしいということだけですね」と言った。

 最速160キロを超える右腕で、ともに岩手県出身という共通点がある。昨年、大谷は佐々木について「すごい。僕なんかとは比べものにならない」とうれしそうに話し、能力の高さに一目置いている。だが、進んできた道も違えば、もちろん人間性も違う。野球では投手と野手の二刀流でプレーする大谷と、投手一本の佐々木。決して同じ境遇ではない。だからこそ、「その人にはその人の悩みや課題がある」という答えになったのだと思う。
 
 昨年6月8日のマリナーズ戦後にも、似たようなコメントを残した。花巻東高の先輩でもある菊池雄星とのメジャー初対決で、3打席目に本塁打。肩口から大きく曲がる左腕のカーブに体を開かず、体重を残して左中間へ運んだ。逆方向へ伸びる、お手本のような打球だった。だが、そのスウィング技術については「人それぞれバットの軌道も違いますし。どこに飛ぶか、どこに(打球を)上げやすいか、そういうのも違う」と淡々と振り返った。

 個人によって打撃フォームはさまざまで、それぞれに合ったスタイルがある。だから、ボールを捉えるまでのスウィング軌道も変わる。一概にこれが正解というものはないのだろう。ただ、一流選手は年々、シーズン中なら日ごとに変化を加えている。大谷自身も、今キャンプでは昨年までのノーステップ打法から、右足を上げる新打法に取り組んだ。感覚の善し悪しも、その時の状態によりけりだ。

 二刀流でメジャーに挑み、1年目は開幕から投打で活躍した。右ヒジの手術により2年目は打者に専念。3年目は、新型コロナウイルスの影響で先が見えない中、二刀流で復活を目指している。道は人それぞれ。柔軟な思考を持つ大谷なら、前例のない苦難も乗り越えられるはずだ。

文●斎藤庸裕

【著者プロフィール】
さいとう・のぶひろ。1983年、埼玉県生まれ。日刊スポーツ新聞社でプロ野球担当記者を務めた後サンディエゴ州立大学でスポーツビジネスを学ぶ。2018年から大谷翔平の担当記者を務める。日刊スポーツでコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」を配信中。

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