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大学野球

「野球の区切りは野球で」。“最後の春”を失った大学生を救済。2人の卒業生が企画した台湾トップアマチームとの企画

上杉あずさ

2020.06.03

フランスリーズ参戦予定だった中島さん。写真:本人提供

フランスリーズ参戦予定だった中島さん。写真:本人提供

 日本高校野球連盟は5月20日、第102回全国高等学校野球選手権大会と49の都道府県大会中止を発表した。全国の高校球児の夢舞台である甲子園が春夏ともに中止となる非常事態に日本中から悲痛な声が上がった。何より、甲子園を目標に“最後の夏”へと意気込んでいた3年生球児たちの悔しさは計り知れない。

 同じように“最後の春”を失い、自身の野球人生にピリオドを打つ学生は高校生だけではない。5月12日、全日本大学野球連盟が史上初めて全日本大学野球選手権の中止を決めた。それに伴い、各地区のリーグ戦中止も後を絶たない。春の大会で引退し、就活へと切り替える学生も多い。このまま不完全燃焼で野球人生が終わってしまう選手の心情を思うとやりきれない。

 学生スポーツに残念なニュースが相次ぐ中、その現状を打破しようと立ち上がったのが【TAディアーズ】だ。

 同団体が企画しているのは、この春、引退試合を迎えられなかった選手やスタッフ、目標がなく熱いものを求めている人たちを対象に、台湾のトップアマチームと交流戦を行うというものだ。現在メンバー募集を行っている。

※さまざまな問い合わせを受け、参加対象は最終学年以外の硬式野球部員や準硬式、軟式、ソフトボール部(硬式野球経験者に限る)にまで広がってきているという。
 
 企画したのは今年3月に大学を卒業したばかりの2人、福岡教育大学を卒業した中島玲(あきら)さんと横浜国立大学を卒業した赤根健斗さん。

 2人は、本来だったら今頃ヨーロッパで野球をしているはずだった。中島さんはフランス、赤根さんはドイツのリーグでプレーする予定だったが、新型コロナウイルスの世界的な流行によりその夢に待ったがかかった。中島さんが参戦予定だったフランスリーグは既に今シーズンの中止が決まっている。

 もともと、野球塾を作って子供たちに指導したいという目標を持っていた中島さん。大学2年生の時、興味本位で参加したJICAの野球普及活動にて新たな夢を描いた。「知らないことだらけだった」という1ヵ月のタンザニア生活の経験から視野が広がり、より多くの学びを求めるようになったと語る。指導者になる上で自身の引き出しを増やすためにと考えてのフランスリーグ参戦だったのだが、新型コロナですべてが狂ってしまった。福岡の実家でトレーニングをしながら、アルバイト生活を続けていた。

 将来設計を描けないでいたところに、届いたのが全日本大学野球選手権中止の知らせだった。「当事者だったら受け入れるのが難しいと思う」と春で引退する後輩にかける言葉も見つからなかった中島さん。目標となる舞台を失った今、何ができるかを考え、行き着いた先が「野球の区切りは野球で」という想いだった。
 

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