先日、ピート・ローズが現役時代にコルクバットを使っていた疑惑が浮上し、「イチローこそが真のヒットキング」と主張する人たちが大喜びで取り上げていた。コルクバット自体が違法である点に疑問の余地はないが、どれほどの効果があるものかは疑わしい。それでも、過去に多くの打者が手を染めていて、中でも大きな騒動になったのが、年間60本塁打以上を3度も記録したサミー・ソーサの一件だった。
2003年6月3日、リグリー・フィールドでのシカゴ・カブス対タンパベイ・デビルレイズ戦。初回、1死二、三塁で打席に立ったソーサは、ジェレミー・ゴンザレス(のち巨人にも在籍)の7球目を叩いて二塁ゴロに倒れた。だが、捕手のトビー・ホールはすぐ異変を察知し、大きく裂けたバットの破片を主審のティム・マクレランドに手渡した。そこには明らかに異質な茶色い物質が付着していた。塁審を集めて協議した結果、コルクバットと断定されソーサは退場となった。
5年前にマーク・マグワイアとのホームランレースで全米を沸かせたヒーローのスキャンダルとあって、ニュースは大々的に報じられた。試合後ソーサは「あのバットがコルク入りだったのは事実」と認めて謝罪しつつも「打撃練習でファンを喜ばせるために持っていたもので、試合で使ったことはない。今日はうっかり他のバットと取り違えたんだ」と言い逃れも試みた。
実際、X線を使用した調査では、ソーサの所有するバットは野球殿堂に寄贈されたものも含め、全部正規のものと判明した。彼の釈明は嘘ではなかったわけだが、リーグからは8試合の出場停止を命じられ(その後7試合に減刑)。11日から処分は実施され、復帰後最初の試合となった18日には意地の2ランを放っている。
事件前から薬物疑惑が囁かれていたソーサの悪評は、これで決定的になった。この年から成績も下降線をたどり、07年を最後にメジャーの舞台から姿を消した。歴代9位の通算609本塁打を放ちながら、75%の得票率が必要な殿堂入り投票でも10%台に低迷。現役時代の雄姿よりも、かつてのマイケル・ジャクソンのように肌を「漂白」したことが話題になる現状はあまりにも寂しい。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――"裏歴史の主人公たち"」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
【PHOTO】艶やかに球場を彩るMLBの「美女チアリーダーズ」!
2003年6月3日、リグリー・フィールドでのシカゴ・カブス対タンパベイ・デビルレイズ戦。初回、1死二、三塁で打席に立ったソーサは、ジェレミー・ゴンザレス(のち巨人にも在籍)の7球目を叩いて二塁ゴロに倒れた。だが、捕手のトビー・ホールはすぐ異変を察知し、大きく裂けたバットの破片を主審のティム・マクレランドに手渡した。そこには明らかに異質な茶色い物質が付着していた。塁審を集めて協議した結果、コルクバットと断定されソーサは退場となった。
5年前にマーク・マグワイアとのホームランレースで全米を沸かせたヒーローのスキャンダルとあって、ニュースは大々的に報じられた。試合後ソーサは「あのバットがコルク入りだったのは事実」と認めて謝罪しつつも「打撃練習でファンを喜ばせるために持っていたもので、試合で使ったことはない。今日はうっかり他のバットと取り違えたんだ」と言い逃れも試みた。
実際、X線を使用した調査では、ソーサの所有するバットは野球殿堂に寄贈されたものも含め、全部正規のものと判明した。彼の釈明は嘘ではなかったわけだが、リーグからは8試合の出場停止を命じられ(その後7試合に減刑)。11日から処分は実施され、復帰後最初の試合となった18日には意地の2ランを放っている。
事件前から薬物疑惑が囁かれていたソーサの悪評は、これで決定的になった。この年から成績も下降線をたどり、07年を最後にメジャーの舞台から姿を消した。歴代9位の通算609本塁打を放ちながら、75%の得票率が必要な殿堂入り投票でも10%台に低迷。現役時代の雄姿よりも、かつてのマイケル・ジャクソンのように肌を「漂白」したことが話題になる現状はあまりにも寂しい。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――"裏歴史の主人公たち"」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
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