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MLB

【MLB今日は何の日】マグワイアとの本塁打レースで全米を沸かせた英雄ソーサのコルクバット使用が発覚

出野哲也

2020.06.03

98年にMVPを獲得し、一時はシカゴの英雄として崇められたソーサだが、ステロイド疑惑やコルクバット事件で悪評を決定的なものにしてしまった。(C)Getty Images

98年にMVPを獲得し、一時はシカゴの英雄として崇められたソーサだが、ステロイド疑惑やコルクバット事件で悪評を決定的なものにしてしまった。(C)Getty Images

 先日、ピート・ローズが現役時代にコルクバットを使っていた疑惑が浮上し、「イチローこそが真のヒットキング」と主張する人たちが大喜びで取り上げていた。コルクバット自体が違法である点に疑問の余地はないが、どれほどの効果があるものかは疑わしい。それでも、過去に多くの打者が手を染めていて、中でも大きな騒動になったのが、年間60本塁打以上を3度も記録したサミー・ソーサの一件だった。

 2003年6月3日、リグリー・フィールドでのシカゴ・カブス対タンパベイ・デビルレイズ戦。初回、1死二、三塁で打席に立ったソーサは、ジェレミー・ゴンザレス(のち巨人にも在籍)の7球目を叩いて二塁ゴロに倒れた。だが、捕手のトビー・ホールはすぐ異変を察知し、大きく裂けたバットの破片を主審のティム・マクレランドに手渡した。そこには明らかに異質な茶色い物質が付着していた。塁審を集めて協議した結果、コルクバットと断定されソーサは退場となった。

 5年前にマーク・マグワイアとのホームランレースで全米を沸かせたヒーローのスキャンダルとあって、ニュースは大々的に報じられた。試合後ソーサは「あのバットがコルク入りだったのは事実」と認めて謝罪しつつも「打撃練習でファンを喜ばせるために持っていたもので、試合で使ったことはない。今日はうっかり他のバットと取り違えたんだ」と言い逃れも試みた。
 
 実際、X線を使用した調査では、ソーサの所有するバットは野球殿堂に寄贈されたものも含め、全部正規のものと判明した。彼の釈明は嘘ではなかったわけだが、リーグからは8試合の出場停止を命じられ(その後7試合に減刑)。11日から処分は実施され、復帰後最初の試合となった18日には意地の2ランを放っている。

 事件前から薬物疑惑が囁かれていたソーサの悪評は、これで決定的になった。この年から成績も下降線をたどり、07年を最後にメジャーの舞台から姿を消した。歴代9位の通算609本塁打を放ちながら、75%の得票率が必要な殿堂入り投票でも10%台に低迷。現役時代の雄姿よりも、かつてのマイケル・ジャクソンのように肌を「漂白」したことが話題になる現状はあまりにも寂しい。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。

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