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偉大な親と違うスポーツを選んだ「二世選手」たち。メジャーリーガーを目指したNHLグレツキーの息子は…

宇根夏樹

2020.06.10

NHL史上最も偉大な選手と言われるグレツキー。次男はアイスホッケーではなく野球を選んだ。(C)Getty Images

NHL史上最も偉大な選手と言われるグレツキー。次男はアイスホッケーではなく野球を選んだ。(C)Getty Images

 プロのアスリートという点では同じでも、親とは違う競技を選ぶ子供もいる。最近の例を挙げると、今年のスーパーボウルでMVPを受賞したパトリック・マホームズ(カンザスシティ・チーフス)は、元メジャーリーガーで横浜でも投げたパット・マホームズを父に持つ。トレイス・トンプソン(アリゾナ・ダイヤモンドバンクス)の父は、元NBA選手のマイカル・トンプソンだ。ちなみに、トレイスの兄2人は父と同じ道へ進んだ。また、元テニス界のレジェンド夫妻であるアンドレ・アガシとシュテフィ・グラフの息子、ジェイデン・アガシは投手兼三塁手として、今年から強豪の南カリフォルニア大へ進学する。

 さすがにジェイデンのような両親ともにスポーツ界のビッグネームは見当たらないものの、9年前のドラフトにかかったある高校生は、父親がベースボール以外の偉大なスポーツ選手という点では、アガシとグラフの息子に勝るとも劣らない。11年のドラフトで7巡目・全体219位でシカゴ・カブスから指名された、一塁手兼外野手のトレバー・グレツキーがそうだ。彼の父は、史上最高のNHL選手と言っても過言ではない。“ザ・グレート・ワン”ことウェイン・グレツキーと女優のジャネット・ジョーンズ――こちらは『プリティ・リーグ』などに出演しているがビッグネームではない――の3人目の子供(次男)として、トレバーはこの世に生を受けた。
 
 ただ、トレバーは芽が出なかった。マイナーで4年プレーしたが、2Aにも上がれず、さらに独立リーグで2年過ごしてキャリアを終えた。マイナー通算215試合で、打率.259、6本塁打、OPS.638。彼がスポットライトを浴びたのは、14年3月にカブスからロサンゼルス・エンジェルスへトレードされた時だ。交換相手がエンジェルスのマイク・ソーシア監督(当時)の息子、マット・ソーシアということで、当人たちよりも父親2人の名前が話題を呼んだ。当時、『ロサンゼルス・タイムズ』紙は「エンジェルスがビッグネームのマイナーリーガー同士を交換」と報じた。なお、一塁手兼捕手だったマットはトレバー以上に打てず、こちらもマイナーリーガーのままユニフォームを脱いだ。

 スポーツの世界では、競技が同じでも違っていても“親の七光り”だけで地位を築くことはできない。グレツキー(やソーシア)の息子が成功できなかった理由がそれかどうかは分からないが、偉大な親の存在がプレッシャーになることもある。もっとも、父親のみならず母親もビッグネームとなれば、重圧には慣れているとの見方もできる。アガシとグラフの息子の場合、実力もあるようだ。有望なのは、野手よりも投手としてか。現在はトミー・ジョン手術のリハビリ中だが、速球の最速は95マイルを超えるという。

 ちなみにトレバーは引退後、俳優に転身。マーク・ウォールバーグ主演の映画『マイル22』やTVドラマ版の『リーサル・ウェポン』に出演している。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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