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MLB

意外と知られていないホームランボールの“価値”。マグワイアとボンズのボールなら、どっちがお高い?

宇根夏樹

2020.06.21

シーズン本塁打記録を樹立したが、その後でステロイド使用が発覚したボンズ(左)とマグワイア(右)のホームランボールは一体いくら? 写真:Getty Images

シーズン本塁打記録を樹立したが、その後でステロイド使用が発覚したボンズ(左)とマグワイア(右)のホームランボールは一体いくら? 写真:Getty Images

 1シーズンに70本以上のホームランを打った選手はたった2人しかいない。マーク・マグワイアが1998年に70本塁打、バリー・ボンズが2001年に73本塁打を記録した。そのうち、マグワイアの70号ボールは300万ドル(約3億4900万円)で取り引きされた。99年1月のオークションで、アメコミ『スポーン』の原作者、トッド・マクファーレンが落札。300万ドルには手数料や税金が含まれているが、落札価格だけでも270万ドル(3億1400万円)に上り、史上最も高値がついたボールだ。

 だが、現在の価値は暴落してしまったらしい。『TMZスポーツ』が報じた記事によると、専門家は25万ドル~40万ドルと見積もっているとのことだ。

 ブラック・マンデーやバブル崩壊を思わせるような暴落だが、最初の300万ドルが高すぎただけで、現在の評価額が妥当という見方もできる。ボンズの73号ボールは、ボールの所有権をめぐって法廷闘争にまで発展したが、03年6月にオークションにかけられ、45万ドル(約5391万円)で落札された。こちらも落札者はマクファーレンだ。マグワイアの70号ボールと比べると、約6分の1。当初は150万ドル(約1億7970万円)になるとの予想も出ていたが、それすら大きく下回った。

 2つのボールの価格にこれほどの差がついた最大の理由は、ステロイド疑惑の広がりだろう。マグワイアの70号ボールがオークションに出品されたのは、サミー・ソーサとのホームラン・バトルが引き起こした大熱狂の余韻がまだ醒めやらぬ時期だった。当時からステロイド疑惑はすでに出始めてはいたものの、まだ世間の耳目を集めてはいなかった。だが、20年以上が経った今では、ボンズと同じように、マグワイアのホームランボールにもステロイド=マイナスの要素が付随するというわけだ。
 
 なお、ボンズが07年にハンク・アーロンを抜き、通算本塁打でもトップに立った756号ボールは、その直後に75万ドルで落札された。入手したファッション・デザイナーのマーク・エコーは、ボールにアスタリスクを付けて殿堂に寄贈した。

 なんだかダーティな話ばかりになってしまったが、一方でホームランボールにまつわるエピソードには、こんなものもある。18年4月3日、大谷翔平(エンジェルス)がメジャー初本塁打を記録した。このボールをつかんだのは対戦相手のインディアンスファンの男性だったが、彼はこのボールを、すぐ後ろで手を伸ばしていたエンジェルスファンの9歳の少年に譲った。初本塁打の記念ボールだからと少年は自らの意思でボールを大谷に返還した。

 大谷はそのお礼として、少年にサイン入りバットを贈り、一緒に記念撮影もした。また大谷は、最初にボールを捕球したインディアンスファンが購入していたレプリカシャツにサインもしたという。三者三様の心温まる行為には、プライスレスな価値がある。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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