今や「日本史上最強投手」と呼んでも差し支えないだろう。サンディエゴ・パドレスに所属する右腕、ダルビッシュ有のことである。
昨年は日本人メジャーリーガー初の最多勝を獲得するなど、サイ・ヤング賞投票では自身2度目の2位。同賞で投票3位以内に入った日本人選手は他に2013年の岩隈久志だけであり、その存在感はやはり際立っている。そして昨オフ、ダルビッシュは大型トレードでシカゴ・カブスから移籍するなど今季も新天地でエースとしての活躍が期待されている存在だ。
ダルビッシュの凄さと言えば、七色に収まらない「11種類」にわたる変化球に言及されることが多い。確かにこれは彼ならではの武器であり、多くのメジャーリーガーたちが敬意を払う特異な能力である。しかし、ダルビッシュが30歳中盤になっても衰えるどこか進化している感を見せているのが「コントロール」である。
1位:ダルビッシュ有(カブス)/76.3%
2位:クレイトン・カーショウ(ドジャース)/74.2%
3位:ジェイコブ・デグロム(メッツ)/72.9%
4位:マックス・シャーザー(ナショナルズ)/72.6%
5位:マルコ・ゴンザレス(マリナーズ)/71.7%
このランキングが何を示しているのかお分かりだろうか。
これは昨シーズン、「3球以内で2ストライクに追い込んだ割合」のメジャートップ5である。当たり前の話だが、投手優位のカウントになればなるほど打撃成績はどんどん下がっていく。昨年のMLBでは、2ストライク時では打率.167、OPS.562という数字で、打者優位カウントの打率.282、OPS.986と比べると雲泥の差があることが分かるだろう。つまり、相手を早く追い込めれば追い込めるだけ、仕留める可能性が高くなるわけだ。
そう考えた時、改めてダルビッシュの「勝負速さ」は驚異的だ。たった3球、しかも76.3%の高い確率でカウントを不利にされてしまえば、打者からすれば対応するのが一気に困難になってくる。しかも思い出してほしい。ダルビッシュは渡米後数年にわたりコントロールに苦しみ、むしろ自分が追い込まれていたことを。2012~18年の与四球率は3.38、それが19年は2.82、そして昨年はリーグ2位の1.66まで改善されているのだ。
加えて、ダルビッシュは“ただ”制球力が進化したわけではない。昨年は速球(4シーム)の平均球速が95.9マイル(約154.3キロ)と自己ベストを更新するなど、年齢を重ねて技巧派になるどころか、本格派としてさらなる高みに上っているのがまた凄い。だからこそ、自ら「年を取ると、たいていの選手は球速や球威が落ちてしまう。でも自分は、25歳、26歳の時よりも良くなっていると思う」と語っているわけである。
ダルビッシュが今季主戦場とするナ・リーグ西地区には、世界一軍団であり、2017年に所属したドジャースという高き壁が存在する。名門球団にはサイ・ヤング賞3回の大投手カーショウ、そして昨季ダルビッシュを阻んだ20年のウィナー、トレバー・バウアーも新たに加わった。決して簡単な相手ではないが、“進化を続ける”ダルビッシュならばきっと好投してくれるのではないか。そうした期待を抱かずにはいられない。
文●新井裕貴(SLUGGER編集部)
昨年は日本人メジャーリーガー初の最多勝を獲得するなど、サイ・ヤング賞投票では自身2度目の2位。同賞で投票3位以内に入った日本人選手は他に2013年の岩隈久志だけであり、その存在感はやはり際立っている。そして昨オフ、ダルビッシュは大型トレードでシカゴ・カブスから移籍するなど今季も新天地でエースとしての活躍が期待されている存在だ。
ダルビッシュの凄さと言えば、七色に収まらない「11種類」にわたる変化球に言及されることが多い。確かにこれは彼ならではの武器であり、多くのメジャーリーガーたちが敬意を払う特異な能力である。しかし、ダルビッシュが30歳中盤になっても衰えるどこか進化している感を見せているのが「コントロール」である。
1位:ダルビッシュ有(カブス)/76.3%
2位:クレイトン・カーショウ(ドジャース)/74.2%
3位:ジェイコブ・デグロム(メッツ)/72.9%
4位:マックス・シャーザー(ナショナルズ)/72.6%
5位:マルコ・ゴンザレス(マリナーズ)/71.7%
このランキングが何を示しているのかお分かりだろうか。
これは昨シーズン、「3球以内で2ストライクに追い込んだ割合」のメジャートップ5である。当たり前の話だが、投手優位のカウントになればなるほど打撃成績はどんどん下がっていく。昨年のMLBでは、2ストライク時では打率.167、OPS.562という数字で、打者優位カウントの打率.282、OPS.986と比べると雲泥の差があることが分かるだろう。つまり、相手を早く追い込めれば追い込めるだけ、仕留める可能性が高くなるわけだ。
そう考えた時、改めてダルビッシュの「勝負速さ」は驚異的だ。たった3球、しかも76.3%の高い確率でカウントを不利にされてしまえば、打者からすれば対応するのが一気に困難になってくる。しかも思い出してほしい。ダルビッシュは渡米後数年にわたりコントロールに苦しみ、むしろ自分が追い込まれていたことを。2012~18年の与四球率は3.38、それが19年は2.82、そして昨年はリーグ2位の1.66まで改善されているのだ。
加えて、ダルビッシュは“ただ”制球力が進化したわけではない。昨年は速球(4シーム)の平均球速が95.9マイル(約154.3キロ)と自己ベストを更新するなど、年齢を重ねて技巧派になるどころか、本格派としてさらなる高みに上っているのがまた凄い。だからこそ、自ら「年を取ると、たいていの選手は球速や球威が落ちてしまう。でも自分は、25歳、26歳の時よりも良くなっていると思う」と語っているわけである。
ダルビッシュが今季主戦場とするナ・リーグ西地区には、世界一軍団であり、2017年に所属したドジャースという高き壁が存在する。名門球団にはサイ・ヤング賞3回の大投手カーショウ、そして昨季ダルビッシュを阻んだ20年のウィナー、トレバー・バウアーも新たに加わった。決して簡単な相手ではないが、“進化を続ける”ダルビッシュならばきっと好投してくれるのではないか。そうした期待を抱かずにはいられない。
文●新井裕貴(SLUGGER編集部)