現地時間6月24日にドジャー・スタジアムで行なわれたドジャース対カブス戦では、4投手の継投でカブスがノーヒッターを達成したが、この日はもう一つトピックがあった。昨オフにドジャースからカブスへ移籍したジョク・ピーダーソンが、久しぶりにドジャー・スタジアムに戻ったのを機に、ワールドシリーズ優勝リングを授与されたのだ。
2010年ドラフト11巡目でプロ入りしたピーダーソンは、昨オフにFAとなってカブスと契約するまでは、ずっとドジャースひと筋だった。昨年のポストシーズンでは、16試合で打率.382、2本塁打、8打点と活躍し、32年ぶりの世界一に貢献。それ以前からピーダーソンはポストシーズンでよく打っていて、ファーストネームとポストシーズンが行なわれる10月(オクトーバー)に引っかけ、“ジョクトーバー”という愛称もあった。
この日、昨年までとは逆に、ビジターチーム側のダグアウトから登場したピーダーソンはかつてのチームメイトに出迎えられ、クレイトン・カーショウから優勝リングを手渡された。
リングを贈られたのはピーダーソンだけではない。ドジャースは彼の兄でダウン症のチャンプにも優勝リングを贈った。
ジョクがドジャースでプレーしていた当時、チャンプはバットボーイを務めたり、始球式で弟の構えるミットに向かって投げたこともあった。ドジャー・スタジアムのロッカールームに頻繁に出入りし、選手たちとは顔馴染み。ジョクは数年前に『ザ・プレーヤーズ・トリビューン』に寄せた手記の中で、チャンプについて「彼はいつも周囲の人々に幸せをもたらす」「僕よりも人々といい関係を築いている」と記している。
さらにチャンプはポストシーズンの試合前に、選手たちに向かってスピーチをし、シャンパンファイトにも参加したことがある。彼もまた、ドジャースの一員とみなされたことがよく分かる。優勝リングを受け取るのにふさわしい一人だと言えるだろう。
ドジャースはチャンプへの優勝リング贈呈を事前には知らせておらず、彼にとってはうれしいサプライズとなった。「ドジャースは素晴らしいチームだし、それを取り巻くすべてが素晴らしい組織だ」。セレモニーの後のインタビューで、チャンプはリングを誇らしげに掲げながら語った。「ジョクの兄になれて、とても幸せだよ」。
この日はノーヒットに終わったジョクだが、27日の試合ではカーショウからタイムリー二塁打を放って“恩返し”。カブスもドジャースも、現在ポストシーズン進出を目指して善戦を続けている。チャンプもきっと、両者が再び10月の大舞台で相まみえることを望んでいるはずだ。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
2010年ドラフト11巡目でプロ入りしたピーダーソンは、昨オフにFAとなってカブスと契約するまでは、ずっとドジャースひと筋だった。昨年のポストシーズンでは、16試合で打率.382、2本塁打、8打点と活躍し、32年ぶりの世界一に貢献。それ以前からピーダーソンはポストシーズンでよく打っていて、ファーストネームとポストシーズンが行なわれる10月(オクトーバー)に引っかけ、“ジョクトーバー”という愛称もあった。
この日、昨年までとは逆に、ビジターチーム側のダグアウトから登場したピーダーソンはかつてのチームメイトに出迎えられ、クレイトン・カーショウから優勝リングを手渡された。
リングを贈られたのはピーダーソンだけではない。ドジャースは彼の兄でダウン症のチャンプにも優勝リングを贈った。
ジョクがドジャースでプレーしていた当時、チャンプはバットボーイを務めたり、始球式で弟の構えるミットに向かって投げたこともあった。ドジャー・スタジアムのロッカールームに頻繁に出入りし、選手たちとは顔馴染み。ジョクは数年前に『ザ・プレーヤーズ・トリビューン』に寄せた手記の中で、チャンプについて「彼はいつも周囲の人々に幸せをもたらす」「僕よりも人々といい関係を築いている」と記している。
さらにチャンプはポストシーズンの試合前に、選手たちに向かってスピーチをし、シャンパンファイトにも参加したことがある。彼もまた、ドジャースの一員とみなされたことがよく分かる。優勝リングを受け取るのにふさわしい一人だと言えるだろう。
ドジャースはチャンプへの優勝リング贈呈を事前には知らせておらず、彼にとってはうれしいサプライズとなった。「ドジャースは素晴らしいチームだし、それを取り巻くすべてが素晴らしい組織だ」。セレモニーの後のインタビューで、チャンプはリングを誇らしげに掲げながら語った。「ジョクの兄になれて、とても幸せだよ」。
この日はノーヒットに終わったジョクだが、27日の試合ではカーショウからタイムリー二塁打を放って“恩返し”。カブスもドジャースも、現在ポストシーズン進出を目指して善戦を続けている。チャンプもきっと、両者が再び10月の大舞台で相まみえることを望んでいるはずだ。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
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