偉大な男がキャリアに終止符を打った。現地2月1日、NFL史上最高のQBと称されるトム・ブレイディが自身のSNSで現役を引退することを表明した。
現在44歳のブレイディは2001年シーズン途中からニューイングランド・ペイトリオッツの主戦QBを務めると、同年にいきなりスーパーボウル制覇を達成。以降も03~04年の連覇を含めて計7回頂点に立った。最後のチャンピオンになった20年シーズンは、ペイトリオッツを離れてタンパベイ・バッカニアーズに移籍した初年度に達成。数々の偉大なレコードを有しているブレイディだが、彼のスーパーボウル制覇数が最多優勝チーム(6回)より多いというのが、その最たるものだろう。
圧倒的な実力と端正な顔立ちでアメリカスポーツ最大のスターへと上り詰めたブレイディ。日本でも、アメフトに興味がなかったとしても名前は聞いたことがある人が多いはずだが、どうやら"あの男"だけは別だったようだ。日本が誇るレジェンド、イチローのことだ。
話はイチローがまだ現役だった2017年にさかのぼる。スプリング・トレーニング中のある朝、イチローの携帯電話に見知らぬ番号からのショートメールが届いた。その謎の人物は、同じく球界の大スターだったアレックス・ロドリゲスから番号を知り、イチローにストレッチや体調管理法を教わりたいと連絡したのだった。
メッセージの人物名が分からないイチローは首を傾けていると、あるコーチが「送り主の名前は何というんだ?」と尋ねた。その問いに、イチローはこう返したのだった。
「Tom Bradyっていうんだけど。このTom Bradyってやつ、誰なの?」
イチローがブレイディの名前すら知らないことを知ったコーチの驚きたるや、どれほどのものだったか。アメリカ最大の人気スポーツの看板選手で、数々のCMにも出演する大スター。この"イチロー伝説"を報じたスポーツメディア『The Athletic』の名物記者ピーター・ギャモンズは「ベースボールの天才の世界では、イチローはトム・ブレイディなど知る必要もなかったようだ」と綴っている。
イチローが常に野球のことだけに集中していたことを物語るエピソードとして語り継がれているが、見方を変えるとイチローの偉大さもうかがいしれる。
1973年生まれのイチローはブレイディより4歳年上。この事件が起きる前のシーズンでは、43歳にして143試合に出場して打率.291、10盗塁をマーク。8月には史上30人目のメジャー通算3000安打の金字塔を打ち立てていた。
対するブレイディは、17年のスーパーボウルで大逆転勝ちを収めて6度目の優勝。こちらも老いとは無縁だったが、40歳という節目を迎えるにあたり、どのようなトレーニングを積むべきか改めて見直したかったのだろう。そこで白羽の矢を立てたのが、イチローだったというわけだ。
道具へのこだわり、試合への入念な準備、徹底したルーティーンワーク。キャリアを通じて故障者リスト入りしたのは2009年の一度だけ、しかもこの時も負傷ではなく、第2回WBCでのストレスから来たとされる胃潰瘍での離脱だった。
「天才は天才を知る」――。野球でもアメフトでも、年齢を重ねて活躍を続けることは至難の業だ。それを知っているからこそ、ブレイディはイチローの偉大さを理解し、その門を叩いたのだろう。それにしても、イチローが自分のことを知らなかったことについて、ブレイディがどう思っていたのだろうか。
構成●THE DIGEST編集部
【動画】イチロー史上最高の名場面の一つ! 通算3000安打達成の感動をもう一度
現在44歳のブレイディは2001年シーズン途中からニューイングランド・ペイトリオッツの主戦QBを務めると、同年にいきなりスーパーボウル制覇を達成。以降も03~04年の連覇を含めて計7回頂点に立った。最後のチャンピオンになった20年シーズンは、ペイトリオッツを離れてタンパベイ・バッカニアーズに移籍した初年度に達成。数々の偉大なレコードを有しているブレイディだが、彼のスーパーボウル制覇数が最多優勝チーム(6回)より多いというのが、その最たるものだろう。
圧倒的な実力と端正な顔立ちでアメリカスポーツ最大のスターへと上り詰めたブレイディ。日本でも、アメフトに興味がなかったとしても名前は聞いたことがある人が多いはずだが、どうやら"あの男"だけは別だったようだ。日本が誇るレジェンド、イチローのことだ。
話はイチローがまだ現役だった2017年にさかのぼる。スプリング・トレーニング中のある朝、イチローの携帯電話に見知らぬ番号からのショートメールが届いた。その謎の人物は、同じく球界の大スターだったアレックス・ロドリゲスから番号を知り、イチローにストレッチや体調管理法を教わりたいと連絡したのだった。
メッセージの人物名が分からないイチローは首を傾けていると、あるコーチが「送り主の名前は何というんだ?」と尋ねた。その問いに、イチローはこう返したのだった。
「Tom Bradyっていうんだけど。このTom Bradyってやつ、誰なの?」
イチローがブレイディの名前すら知らないことを知ったコーチの驚きたるや、どれほどのものだったか。アメリカ最大の人気スポーツの看板選手で、数々のCMにも出演する大スター。この"イチロー伝説"を報じたスポーツメディア『The Athletic』の名物記者ピーター・ギャモンズは「ベースボールの天才の世界では、イチローはトム・ブレイディなど知る必要もなかったようだ」と綴っている。
イチローが常に野球のことだけに集中していたことを物語るエピソードとして語り継がれているが、見方を変えるとイチローの偉大さもうかがいしれる。
1973年生まれのイチローはブレイディより4歳年上。この事件が起きる前のシーズンでは、43歳にして143試合に出場して打率.291、10盗塁をマーク。8月には史上30人目のメジャー通算3000安打の金字塔を打ち立てていた。
対するブレイディは、17年のスーパーボウルで大逆転勝ちを収めて6度目の優勝。こちらも老いとは無縁だったが、40歳という節目を迎えるにあたり、どのようなトレーニングを積むべきか改めて見直したかったのだろう。そこで白羽の矢を立てたのが、イチローだったというわけだ。
道具へのこだわり、試合への入念な準備、徹底したルーティーンワーク。キャリアを通じて故障者リスト入りしたのは2009年の一度だけ、しかもこの時も負傷ではなく、第2回WBCでのストレスから来たとされる胃潰瘍での離脱だった。
「天才は天才を知る」――。野球でもアメフトでも、年齢を重ねて活躍を続けることは至難の業だ。それを知っているからこそ、ブレイディはイチローの偉大さを理解し、その門を叩いたのだろう。それにしても、イチローが自分のことを知らなかったことについて、ブレイディがどう思っていたのだろうか。
構成●THE DIGEST編集部
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