プロ野球

豪快弾だけではなく献身性も光る。苦しむ阪神を救った“苦しみ続けた”助っ人ロハスJr.。「突如としてチャンスを掴んだ」

THE DIGEST編集部

2022.08.19

豪快な一発を放ったかと思えば、四球を選んで得点機を演出。ロハスJr.はとにかく相手バッテリーにとって嫌な存在になっている。写真:鈴木颯太朗

「どんな形でもランナーをかえしたいと思っていた」

 苦しむ猛虎に光明をもたらしたのは、そう語った助っ人スラッガーだった。

 8月18日、敵地で開催されたヤクルト戦に「3番・左翼」で出場したメル・ロハスJr.(阪神)は3打数(1四球)1安打3打点1本塁打と活躍。出色のパフォーマンスで「8」にまで伸びていたチームの連敗を止めた。

 豪快な一発が神宮の夜空を彩った。スコアレスで迎えた3回2死一、二塁の好機で打席に入ったロハスJr.は、カウント2-2から相手先発サイスニードが真ん中低めに投じた151キロのストレートを強振すると、高々と舞い上がった打球はライトポール際を巻き込むようにして着弾。4球目にほぼ同じコースに投じられたスプリットを見極めたうえで、チャンスボールを振り抜いた会心の一打だった。

 フラッシュインタビューで「追い込まれてからは、少しバットを短く持って食らいつく意識を持っていた」と勝利に貪欲なコメントを残したロハスJr.。終盤7回にも、彼の献身性が伺える打撃を見せた。2死一、三塁の好機で冷静にボールを見極めていくと、最後は3球連続で低めに投じられたフォークを空振りせずに見送って四球で出塁。直後に打席に入った4番・佐藤輝明の2点タイムリーヒットを呼び込んだ。
 
 もっとも、コロナ禍で多くの主力が離脱している現在の阪神にあって、ロハスJr.は唯一と言っていいほどに可能性が感じられる打者ではあった。というのも、今月に入ってから手のつけようがないほどに打ちまくっていたのだ。

 開幕して間もなくして二軍と一軍を行き来する日々を送っていた32歳だったが、今月4月に大山悠輔と北條史也の新型コロナウイルス陽性判定(※すでに両名とも回復)を発表されると、急遽一軍に昇格。「チームメートの穴を埋めたいと必死だった」というロハスJr.は、そこから月間成績を打率.367(30打数11安打)、4本塁打、9打点、OPS1.241、出塁率.442、得点圏打率.400にまで上げたのである。

 今季限りで契約満了となるため、いまだ崖っぷちに立たされている事実は変わらない。それでも懸命な働きぶりを見せているロハスJr.には、かつて彼が二冠王となった韓国のメディアも熱視線を送っている。日刊紙『朝鮮日報』は「ついに復活を果たすかもしれない。彼は8月に入ってから突如としてチャンスを掴み、持ち味だった打撃で存在感を誇示している」と期待を込めた。

 主力を欠いて低調なパフォーマンスに終始していた阪神。とはいえ、ペナントレースにおけるAクラス入り、ひいてはクライマックスシリーズからの日本シリーズ進出の可能性もまだ残されている。そのなかで文字通りチームを救う存在になっている助っ人がこのまま打ち続ければ、虎党の期待はより高まっていきそうだ。

構成●THE DIGEST編集部

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