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MLB

豪快アーチ連発の一方で制球力は平均以下との評価も...アメリカ大学球界を席捲するキャグリオーンは本当に“第2の大谷”になれるのか<SLUGGER>

藤原彬

2024.04.22

プロでも二刀流継続に意欲満々のキャグリオーン。“第2の大谷”としてファンの期待は高まる一方だ。(C)Getty Images

プロでも二刀流継続に意欲満々のキャグリオーン。“第2の大谷”としてファンの期待は高まる一方だ。(C)Getty Images

 身長196cm、体重111kgの大型スラッガーが左打席から繰り出す打球は、逆方向のフェンスすら悠々と越えていく。

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 4月20日、フロリダ大3年のジャック・キャグリオーンが、NCAA(全米大学体育協会)歴代最長記録に並ぶ9試合連続本塁打を放った。7試合目の一発は推定飛距離516フィート(約157.3m)と発表され、金属バットを使った数字ではあるが、MLBのスタットキャスト計測史上最長505フィート(約153.9m)を上回った。

 投げては最速99マイルを叩き出す「大学球界の大谷翔平(ドジャース)」は、ピート・アロンゾ(メッツ)やカイル・タッカー(アストロズ)などを輩出したH・Bプラント高校時代から投打で活躍。当然、高校に入学した年にメジャーデビューした大谷を「注意深く観察し、そのすべてを研究した」という。

 大学入学当初は投手起用のみで考えられていたが、トミー・ジョン手術を受けた後の1年時は、まずはバット一本で実戦を重ねた。2年になった昨年は、NCAAで現行のバット規則が定められた2011年以降で最多の34本塁打(71試合)と猛打を振るい、その傍らでマウンドにも上がった。

 打者としては、ずば抜けた長打力に加え、今季は三振より多い四球を選ぶなど打席アプローチも着実に成長し、一塁守備も評価を集めている。最も優れた大学の二刀流選手に贈られるジョン・オルルード賞獲得が確実され、今年7月のドラフトでも全体トップ3に入る逸材と位置付けられる。
 一方で、投手としては100マイル近い速球は魅力だが、昨年が18登板で防御率4.34、今年が8登板で3.89と平凡な成績。スカウティング・レポートでは「ストライクを投げる能力は平均以下」「スライダーやチェンジアップの安定性も要改善」との厳しい指摘もある。

 何より、大谷以外の本格的な二刀流選手がなかなか出てきていないという現状がある。

 マイケル・ロレンゼン(レンジャーズ)は21年を最後に投手に専念。カリアノーネと同じく、大学時代に二刀流として大活躍したブレンダン・マッケイ(レイズ)も、相次ぐ故障でここ4年間、メジャーの舞台に立つことすらできていない。また、昨年のドラフト全体16位で指名されたブライス・エルドリッジ(ジャイアンツ)も早々に野手専念を発表した。

 それでも、元サイ・ヤング賞投手のデビッド・プライスに憧れて背番号14番を選んだカリアノーネは二刀流について「将来的にチームからきっぱりと言われるまでやめる気はない」と断言。“ジャクタニ”や“ショーヘイ・キャグリオーン”のニックネームを、数年後にメジャーで浸透させられるだろうか。答えは数年を待たななければならないが、夢は膨らむ。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。X(旧ツイッター)IDは@Struggler_AKIRA。

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