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ドジャースの投手11人故障者リスト入りは本当に“非常事態”なのか。敏腕編成トップの補強歴から見え隠れする“深謀遠慮”<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2024.07.01

球界屈指の敏腕として知られるフリードマン。故障者続出もある程度は想定内?(C)Getty Images

 6月25日(現地)にシーズンのちょうど半分となる81試合目を終えたドジャース。その時点で50勝31敗と年間100勝ペースで勝利を積み上げており、ここまでまずは順調な戦いぶりと言っていい。

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 一方で、投手陣に故障者が続出し、一部メディアでは「野戦病院」「非常事態」といった表現も使われている。確かに、そう言われてもおかしくないほど多くの投手が戦列を離れているのは事実だ。現時点で故障者リスト(IL)に入っている投手は実に11人を数える。

ウォーカー・ビューラー(6月19日│股関節)
山本由伸(6月16日│右肩腱板)
マイケル・グローブ(6月16日│広背筋)
ジョー・ケリー(5月6日│右肩)
ライアン・ブレイジャー(4月28日│ふくらはぎ)
コナー・ブログドン(4月10日│右足)
トニー・ゴンソリン(3月20日│トミー・ジョン手術)
クレイトン・カーショウ(3月20日│左肩手術)
ダスティン・メイ(3月20日│右屈腱筋手術)
エメット・シーハン(3月17日│トミー・ジョン手術)
ブルスダー・グラテロル(3月17日│右肩)
※日付はIL入り日

 これだけの数の投手が戦線を離脱しているのだから、「野戦病院」という表現は間違っていないだろう。ただ、「非常事態」かと言われると、アンドリュー・フリードマン編成総責任者は必ずしもそう考えていないのではないか。

 まず、ゴンソリン、カーショウ、メイの3人はいずれも手術の影響であらかじめ出遅れが決まっていた。ブログドンは途中加入直後の故障で、そもそもさほど戦力として計算されていた投手ではない。ケリーは元々故障がちで、ブレイジャーもすでに36歳。ビューラーはトミー・ジョン手術明け、山本もメジャー1年目ということで(時期や故障の程度はともかく)、一定期間の離脱は想定内だったはずだ。

 そう考えると、本当の意味で大きな「誤算」だったのは、昨季68登板とフル回転したグラテロルと、躍進が期待されていた若手のシーハンくらいだったとも言える。
 しかも、フリードマン編成総責任者はこの"非常事態"に対して極めて冷静に、しかも的確に対処している。先発陣ではギャビン・ストーン、ランドン・ナックの両若手右腕が大健闘。ブルペンでも、途中加入のヨハン・ラミレス、アンソニー・バンダが意外な好投を見せれば、ダニエル・ハドソン、ブレイク・トライネンの両ベテランが懸命に腕を振ってチームに貢献している。

 さらに言えば、フリードマン編成総責任者は今後、ハドソンやトライネン、そして事実上のエースとして好投を続けるタイラー・グラスナウがどこかの段階で一時休止する可能性が高いこともまた想定していることだろう。そして、その頃にはカーショウや山本、ケリーらが戦列に戻り、さらにはデッドライン・トレードでさらなる底上げを図る――そんな青写真を描いているはずだ。

 フリードマン編成総責任者はそもそも、故障がちでも空振り奪取能力が高い、もしくは絶対的な決め球を持っている投手を好んで獲得している。グラスナウ、ケリー、ハドソン、トライネンだけでなく、ベテラン先発左腕のジェームズ・パクストンもそうだ。当然、彼らのこれまでの故障歴を見れば、シーズンを通して健康に稼働できる可能性は低いことは誰でも分かる。それでも「あえて」獲得しているのだから、これは一定数の故障離脱は当然、想定内しているだろう。

 6月28日終了時点で、先発防御率3.48はリーグ2位、ブルペン防御率3.03は1位、トータルでも3.32でフィリーズに次いで2位。これのどこが「非常事態」なのか――フリードマン編成総責任者はそんな風に思っているかもしれない。

構成●SLUGGER編集部

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