プロ野球

夢の対決直前に映し出された「アイスを頬張る往年のレジェンド」――“緊張と緩和”そして“ガチ感”が絶妙にブレンドされたドラゴンズOB戦<SLUGGER>

加賀一輝

2024.07.26

三塁で軽快な守備を見せるも送球は...。宇野勝氏の姿も“緊張と緩和”を凝縮していた。写真:産経新聞社

 7月25日、中日ドラゴンズ球団初のOB戦「DRAGONS CLASSIC LEGEND GAME 2024」がバンテリンドームナゴヤで行われた。

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 ファン目線で言えば、「やっと、ついに、開催された」という思いだ。近年では19年にヤクルト、今春に西武が実施。いずれも大盛況のうちに終わっており、いよいよ自分たちの番がやってきた喜びでいっぱいだったのだ。

■"緊張と緩和"、そして"ガチ感"

 OB戦の何が楽しみか。ズバリ"緊張と緩和"、そして"ガチ感"である。

 前者は往年の名選手が思うように身体を動かせないのを目の当たりにし、現役時代とは異なる姿に力がフッと抜けるような状況。後者は現役時代さながらのパフォーマンスや、投打の一騎打ちに唸ること。こちらは7月22日に行われた「日韓ドリームプレーヤーズゲーム」で感じたことでもある。

 では、今回の中日OB戦はどうだったか。しっかり「緊張と緩和」を体感できたし、「ガチ感」も随所に感じられた。

「緊張と緩和」でいうと、初回の小松辰雄氏と中尾孝義氏の1982年優勝バッテリーはオールドファンの力が入るには十分すぎる演出だが、投球練習で何度もボールを逸らすなどグダグダなスタート。のっけから3失点を喫する形となった(なお、小松氏はスパイクを履けておらず、硬いマウンドに合わなかった旨を降板後に明かしている)。
 また、三塁を守った宇野勝氏は横っ跳びでの好捕や逆シングル捕球で魅せるも、いずれもスローイングまでは身体がついていかず。場内も「おおっ」となった後に「あ~」と、ため息混じりの笑いと拍手に包まれていた。

 一方、最も「ガチ感」を感じられたのは英智氏である。現役時代さながらのスライディングキャッチやレーザービームを見せつけ、打席でも中押し点となる2点タイムリー三塁打を記録。見事、最優秀選手に輝いた(独特な言葉を紡ぐヒーローインタビューも現役時代のままであった)。

 究極の「緊張と緩和」かつ「ガチ感」は最終7回に訪れた。2点リードの強竜チームは岩瀬仁紀氏がマウンドへ。対する昇竜チームの先頭打者は小笠原道大氏。通算407セーブを挙げたプロ野球史上屈指のクローザーと、強烈なフルスウィングで通算2120安打&378本塁打を記録したスラッガーの一騎打ち。これを堪能しようとした矢先、アイスキャンデーを頬張る田尾安志氏と福留孝介氏がビジョンに大写しに。

 最高峰の対決を見守ろうと球場中が固唾を呑む中、2人のあまりのリラックスした姿に爆笑の嵐。それでもこの後、難しいピッチャーゴロをさばいた岩瀬氏のフィールディングは現役時代さながらであった。
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