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ホームラン・ダービー出場者は後半戦不振に陥る――まことしやかに囁かれてきた“呪い”は幻だった!?データから見えてきた「本当の理由」<SLUGGER>

藤原彬

2024.08.17

ホームラン・ダービーで優勝したヘルナンデスは後半戦も変わらず打ちまくっている。(C)Getty Images

 オールスターのホームラン・ダービーに出場した選手はその後、不振に陥る――そんな話がしばしば信憑性をもって語られる。ダービーに超大物がなかなか出場しないのもそれが一因だと考えるファンも少なくない。だが、今年のホームラン・ダービー参加者は、初優勝したテオスカー・ヘルナンデス(ドジャース)を筆頭に多くの打者が後半戦も好調を維持している。"ホームラン・ダービーの呪い"の実際の信憑性はどれほどなのだろうか。

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"呪い"の存在がまことしやかに囁かれるようになったきっかけは、2005年のボビー・アブレイユ(当時フィリーズ)だと言われている。この年のアブレイユは前半戦に18本塁打を放ち、ホームラン・ダービーでは圧勝しながら、後半戦は6本のみ。以降もこうした事例が続いたこともあり、「ダービーを終えて、さらに良くなった選手は見たことがない」(エンジェルスで19年間指揮を執ったマイク・ソーシア)との声さえ出た。

 だが今年のオールスター期間中、ウェブメディア『ジ・アスレティック』が興味深い記事を公開した。ダービー出場者の後半戦の不調は"呪い"ではなく、「平均への回帰」が原因だというのだ。

 記事によると、16年以降の出場者の68%が後半戦にホームランのペースを落としている。これだけなら「"呪い"の存在が立証された!」となりそうなものだが、そうではない。
 後半戦に調子を落とした選手のデータを見ると、その多くはフライ打球の割合はそれほど変わっていない。しかし、HR/FB(全フライ打球におけるホームランの割合)が前半戦から著しく低下していた。HR/FBはランダム性の強い指標で、運不運などによっても左右されやすいことで知られている。

 つまりこういうことだ。ホームラン・ダービーに出場するほどの選手は当然、前半戦に多くのアーチを量産している。しかし、そこには運も作用しているケースが多分にあり、シーズンが進むにつれて運や偶然の要素が減って行って本来の数値に近づいていく。これが「平均への回帰」だ。つまり、ダービーに出場した選手の多くがその後、本塁打のペースを落とすのは"呪い"のせいではなく、統計学上の「あるある」というわけだ。

 先述したように、今年のダービー出場者の多くは後半戦も好調を維持している。ヘルナンデスやマーセル・オズーナ(ブレーブス)、ボビー・ウィットJr.(ロイヤルズ)に至っては前半戦をさらに上回るペースで本塁打を量産している。彼らの活躍も"ホームラン・ダービーの呪い"の解体につながるかもしれない。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。X(旧ツイッター)IDは@Struggler_AKIRA。

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