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プロ野球

明治大・宗山と関西大・金丸はいかにしてトップ・プロスペクトとなったのか。2024ドラフト投打の目玉の「ルーツ」を探る――<SLUGGER>

西尾典文

2024.10.11

宗山(右)には早くも広島が1位指名を発表。金丸(左)ともども、複数球団の強豪が確実とみられる。

宗山(右)には早くも広島が1位指名を発表。金丸(左)ともども、複数球団の強豪が確実とみられる。

 今年のドラフトの目玉と言えば、投手なら金丸夢斗(関西大)、野手であれば宗山塁(明治大)になるだろう。

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 金丸はスピード、コントロール、変化球のすべてが高レベルの左腕、宗山は高い守備力と打撃力を兼ね備えた遊撃手と、いずれも希少価値が高く、複数球団の1位指名が濃厚と見られている。しかし、ともに高校時代は上位候補と見られていたわけではなく、大学で大きく成長したという点も共通している。

 では、そんな2人がドラフトの目玉としての評価を固めたのはいつだったのだろうか。

 まず金丸は神港橘の出身で、下級生の頃はエースではなく、主戦となったのは2年秋からである。3年夏に行われた兵庫県独自大会では好投を見せたが、早々に関西大への進学が決まっていたこともあって、本格的に調査していた球団はなかったという。

 金丸の名前が関係者の間で評判になり始めたのは大学2年の春からだ。先発に定着すると、リーグトップとなる防御率0.33をマーク。筆者が初めてピッチングを見たのは、2年春のシーズン後に行われた「関西5リーグオールスター戦」だった。関西学生野球選抜の一員として、関西六大学野球選抜との試合に先発した金丸は最速149キロをマークするなど、ポテンシャルの高さを見せた。

 もっとも、4回を投げて4三振を奪ったものの、立ち上がりに3連打を浴びて2点を失うなど、決して完璧な内容だったわけではない。初めて主戦としてリーグ戦を投げ終えた後ということもあったと思われるが、まだあらゆる面で甘さがあったことも確かだろう。

 しかし、結果的にこの試合が筆者が唯一現地で見た金丸の不安定な投球となった。2年秋には6勝0敗とさらに成績を伸ばすと、初の全国大会となった明治神宮大会でも東農大北海道オホーツクを相手に7回を無失点、8奪三振と快投。3年春は味方の援護がなく3勝に終わったものの、39.2回で62奪三振を記録すると、3年秋は6勝0敗、防御率0.35とほぼ完璧な投球でチームを優勝に導いた。

 リーグ戦の投球も素晴らしかったが、それ以上に強烈な印象を残したのが昨年12月に行われた大学日本代表候補合宿での紅白戦だ。宗山を相手にストレート、スライダー、ストレートで三球三振を奪ってみせたのだ。秋のシーズンの疲れもあったとのことだが、そんなことをまったく感じさせない圧倒的な投球だった。2年秋から3年秋の3シーズンと、この大学日本代表候補合宿での投球で金丸が「2024年の目玉」という評価を確実にしたと言えそうだ。
 一方の宗山は、金丸と比べると高校時代から評価の高い選手だった。名門・広陵高で1年秋からセカンドのレギュラーに定着し、明治神宮大会にも出場。初戦で星稜のエースだった奥川恭伸(現ヤクルト)に抑え込まれて敗れたものの、宗山はチームの3安打中2安打を放つ活躍を見せており、当時から高いミート力は際立っていた。ただ、身体はそれほど大きくなく、高校時代にプロ志望届を出していたとしても上位指名を受けていた可能性は低かっただろう。

 明治大でも入学直後からリーグ戦に出場し、1年秋には早くもベストナインを受賞していたが、プロからの評価が一気に高まったと思われるのは2年生の時である。

 春秋合計27試合に出場して41安打、7本塁打、28打点と圧倒的な成績を残したのだ。身体つきも1年生の時よりも一回り大きくなり、明らかに打撃が力強くなったと感じたのをよく覚えている。3年以降は相手のマークも厳しくなり、なかなかホームランが出なかったものの、この秋はすでに2本塁打を放っており、リーグ戦通算10本塁打にも到達した。ショートの守備が先に取り上げられることが多いが、東京六大学でこれだけのペースで打ち続けられる選手はそうそういるものではない。

 守備面で強烈な印象を残したのは大学2年秋に出場した明治神宮大会だ。この大会ではホームランは放ちながらも3試合で2安打と打撃での貢献度は高くなかったが、守備では度々難しい打球を軽やかに処理し、その度にスタンドからはどよめきが起こっていたのだ。この頃から東京六大学では“鳥谷敬以来の大物ショート”という評価が定着した印象だ。

 こうして改めて2人の大学での足跡を見てみると、ともに4年春に怪我はあったものの、下級生の頃に高い評価を得ながらも、上級生になってもその高い評価に違わぬ結果を残していることがよく分かる。そういう部分も、彼らが頭一つ抜けた存在となっている要因と言えるだろう。

 果たしてこの2人をどの球団が獲得するのか。2024年のドラフト会議における最大の注目ポイントとなることは間違いない。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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