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高校野球

【甲子園】「1、2年生が二遊間に入る守備力では一歩及ばなかった」須江監督の言葉から見えた仙台育英の“限界”と“反撃の予感”<SLUGGER>

氏原英明

2025.08.17

「うちは結局、1年生がスタメンに入っている。でも(世間が言う)スーパー1年生なんていうのは存在しないんですよ。本来は2、3年生が練習量も多いし、経験値も高いはずだから、普通に考えればスタメン入ってくるわけですよね。でも、それができていないということは鍛えきれなかったということです。1年生がすごいというより、2、3年生を育てられなかった指導の問題なわけです。ですから、当たり前ですけど、1、2年生が二遊間に入ってたりするような守備力では一歩及ばなかったんですね」

 個々のポテンシャル、例えばボールを遠くに飛ばすことや純粋な肩の強さ、あるいは投手の球速などでは、過去のチームと遜色ないという自負はある。しかし、それだけでは甲子園では勝てないというのが、選手の育成との両立の難しさだ。

沖縄尚学は2年生エースの末吉良丞を中心に手堅く守り、そつなく攻撃して、得点を挙げていった。須江監督は「横綱と思って挑んだ」と振り返っているが、その意味では甲子園で勝つためには必要な敗戦だったということでもある。

 ただ、チーム内での激化する競争をどう勝つ力に変えていくかはこれからも続く難題ではある。どちらかに寄せるのも一つの手だが、須江監督は「僕は両立は可能と思っている」と力強く宣言してこう結んだ。
 
「育成することと勝つことが両立できるかっていうのは、2020年、21年、コロナ禍の時ですけど、非常にこだわってやったんです。で、21年の夏に甲子園出られなくて、その時の控え選手に3年間を振り返ってプレゼンをしてもらったんです。その時に『いつでも誰でもレギュラーなる可能性がある環境の中でやる野球がとても楽しかった』と言ってくれた。反面、『レギュラーが入れ替わるから、成熟していかない感覚は正直あったたかもしれない』という声がありました」

「それを真摯に受け止めて、どんな方法で、いつまで、どの段階まで競わせて、そこから成熟させるのか。そうしたチーム作りをアップデートしながらやってきたので、僕は勝利と育成を両立できると思っています。一つ答えが僕の中にはでは出たんですけど、今年は結果だけがついてこなかったですね。だから、僕は明るい敗戦だと思っています」

 チームがビッグクラブのように肥大化していく中で、成熟が間に合わずに敗れてしまった3年ぶりの甲子園。試合後の須江監督の「止まった針は動き出した」という言葉から、仙台育英の反撃が始まることを予感させた。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも
開設している。

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