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プロ野球

48歳でトライアウトに挑む新庄剛志に贈りたい、フリオ・フランコからの“金言”

THE DIGEST編集部

2020.12.06

 フランコが明確に「引退」を表明したのは2008年、49歳の時だった。新庄と違ってほぼどこかしらのリーグに在籍して腕をなまらせなかったから、今回の新庄の“挑戦”とは微妙に意味合いは異なる。けれども、周囲の選手が自身より一回りどこらか子供の年齢であってもおかしくないような環境でも野球を楽しみ、そして「もうやめなよ」という声を掛けられようとも、Going my wayを貫く姿勢は共通するところだろう。

 そのフランコは2年前、こんなことを口にした。「もし私が60歳で再び現役復帰をしようとしたら、キミは私のことを信じることができるかな?」

 当然、フランコ自身も“無茶”な言葉だと分かっている。「メジャーでは30代後半の選手はどんどんクビになっていて、年齢を重ねるとスピードボールが打てない研究結果も出ているよね。リリーフ投手の球速もどんどん上がって、今ではヒットより三振の方が多くなっている。本当に打者にとっては難しい時代だ」と冷静に球界を見つめている。しかし、彼は自身の信条をこう語っている。

「人間という生き物は、自分が信じたいものしか信じようとしないんだ。自分の脳のキャパシティでしか判断しない。だから、キャパを超えた物事に対しては何も考えることができないんだ」。そして、こう続けた。「でもね、我々はそのキャパシティを超えることができるんだよ。だから、自分で自分を信じて、その限界を超えられるんだと自らを信じることができれば、きっと成し遂げられるはずだ、他の人が何と言おうとね」
 
 現役から13年も離れた男が1年ほどのトレーニングで球界復帰を果たそうとした時、我々は「そんなのは絶対に不可能」と思ったはずだ。中には、「プロを馬鹿にするな」という意見もあったた。しかし、そうした見方は、フランコの言葉を借りれば、「自分のキャパシティでしか見ていない」ことになるのかもしれない。

「思うだけで現実が変わるはずがない」。確かにそうだろう。しかしフランコは、先の言葉を語った最後にこう続ける。「この話をすると、たいていの人は『そんなの信じられない』と言うよ。でもね、何かを成し遂げられたのなら、皆が称賛するし、自分は素晴らしかったと、自ら思うはずなんだよ」

 新庄が昨年に自身のインスタグラム(@shinjo.freedom)を更新して現役復帰を発表した際、自ら「99%は無理。1%の可能性を、どうやって自分でものにするか」と表現した。現役晩年にも右肩や足を痛めており、年齢とともに衰える能力も考えると、難しいことは新庄自身が痛いほど分かっているのだろう。

 しかし、彼は「1%の可能性」を信じている。年齢を重ねて何度もクビを経験してきたフランコと同様に、新庄もまた自分の中に秘める“何か”を信じ続けているのだ。

 明日7日、新庄は偉大なる挑戦の一歩を踏み出す。その結果は誰にも分らない。しかし、新庄自身が最後まで信じ続けたのであれば、もしかしたら、野球の神様も微笑むのではないか。そうあってほしいと、我々もどこか信じているはずである。

構成●THE DIGEST編集部
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