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プロ野球

吉田正尚はいかにして”最高打者”になったのか。高校は”北陸どまり”でドラフト候補外も、青学で急成長

西尾典文

2021.01.22

 高校から大学に進むと、まず木製バットの対応に苦しむケースが多い。しかし、吉田は1年春から完璧に対応し、いきなり打率3割を超えの成績を残した。ただ、吉田の大学時代すべてが順風満帆だったわけではない。2年春にはリーグトップの4本塁打を放ったものの打率.222、12試合で11三振を喫するなど粗さが目立った。この頃は高校時代のシャープなスウィングの面影はだいぶ薄れ、長打か三振かというバッティングになっていた印象が強い。

 しかし、ここからが吉田の非凡なところである。上級生になると明らかに身体つきが一回り大きく成長。余裕を持ってボールを呼び込めるようになり、長打力を残したまま高アベレージを記録できるように進化を遂げていった。

 特に見事だったのが、2015年にU18日本代表と大学日本代表が行った甲子園での壮行試合。吉田はこの試合で2打席連続ホームランを放ったのだが、特に2本目の高橋樹也(花巻東→広島)から放ったバックスクリーンへの一発は、速いボールを見せられた後の低めの変化球に完璧に対応した、技術とパワーが合わさった極上の一打だった。
 
 改めて振り返ってみると、アマチュア時代も最初はアベレージタイプからスタートし、次に長打力を伸ばし、さらに確実性もアップ……というように、螺旋を描くように成長していったことがよく分かる。プロでもまず豪快なホームランで存在感を示したが、昨年はキャリアハイの.350と確実性の方を大幅に伸ばしてみせた。

 そしてこれまでの歩みを考えると、このまま吉田がアベレージ型に特化する可能性は低いだろう。今年は高打率を維持しながら豪快なホームランを増やし、三冠王も視野に入れた活躍を見せてくれることを期待したい。吉田であれば、それも十分に可能と思われる。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。ドラフト、アマチュア野球情報サイト「プロアマ野球研究所(PABBlab)」を2019年8月にリリースして多くの選手やデータを発信している。
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