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プロ野球

都市対抗野球に東大、京大出身の2選手が出場。刈谷高の恩師は「両君には1年でも長く続けて欲しい」

大友良行

2021.01.25

 一方、京大卒の鈴木は、日本新薬で今年3年目を迎える。

 地元の岡崎葵ボーイズで硬式野球に触れた鈴木は、飯田たちが決勝まで勝ち上がった試合を見て刈谷高に進学。大学は1浪して京大経済学部へ進んだ。入学当初、野球はやるつもりはなかったが、関西学生リーグの春のリーグ戦を観戦し、京大が私学相手に健闘する様子に感動して、遅まきながら入部を決めたという。長打力が売りの鈴木は、3年時に社会人野球の練習をいくつか体験したのがきかっけで野球を続けたいと考え、日本新薬に入社を決めた。

「入ってみると今までの野球と違ってレベルが高く、上手い人達に囲まれて野球をしたことがなかったので、とても新鮮な感じでした。追いつくには、練習しかないと思い、徹底的にやっています。始めは、京大だからということで、一歩引かれる雰囲気もありましたが、今そんなことないはず。レギュラーはまだまだですが、時々使ってもらっています。昨末の都市対抗三菱重工広島戦でも8回に2死一、二塁で代打出場。四球を選び出塁しました」
 
 そう少し誇らしげに語る鈴木を、日本新薬の松村聡監督はどう見ているか。

「打撃については素晴らしいものを持っているので、決してみんなより劣ることはない。戦力として見ています。京大生らしく探求心が素晴らしい。You Tubeを解析して研究しているようです。アドバイスも素直に吸収しているし、ウェイトも頑張っています。社会人らしくなってきました。後は守備、走塁などのレベルアップが必要ですが、チームで一番練習熱心なので期待しています」

 午前中は経理財務部で税務局や金融機関との対応に忙しい。午後は、練習のためグラウンドに向かい、「まだまだこれからです。レギュラーを獲りたい」という目標に向けて努力を続けている。

 さて、この二人を輩出したのが刈谷高だ。恩師にあたる岡田泰次監督は高校時代の彼らについて語る。

「飯田が卒業して入れ替わりに鈴木が入学してきました。二人とも、まさか社会人まで続けるとは思いませんでした。暮れに2人がグラウンドに来てくれたので部員に、野球を続けている意味と進学の話などをしてもらいました。彼らの活躍ぶりを取りあげてくれた新聞、雑誌などをコピーして部員に見せています。影響力は大きいです。おかげで現在15人近くが国公立大で野球を続けています。両君には、1年でも長く野球を続けて欲しいです」

 東大、京大卒ということで「もう野球はいいから、早く職場に来てくれ」という声は、社内にはあるようだが、今やチームにとって必要な戦力になっているため、野球部も簡単には手放せない。しかも本人たちは野球大好き人間。レベルの高い社会人野球の中で、さらに自らを鍛え上げ完全燃焼するに違いない。

取材・文●大友良行

【著者プロフィール】
おおとも・よしゆき/元大手新聞社の報道写真記者。事件事故取材の傍らメジャーリーグやサッカーW杯などの欧州サッカーを取材。現在は、全国の大学野球、春夏の甲子園をはじめとする高校野球、都市対抗を中心に社会人野球などを深く取材している。著書に「野球監督の仕事(共著・成美堂出版)」、「CMタイムの逆襲(東急エージェンシー)」などがある。

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