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高校野球

右ヒジ炎症のため準決勝を登板回避した近江・岩佐直哉。その決断に過密日程の影響はなかったか<SLUGGER>

氏原英明

2021.08.29

 もっとも、肩やヒジの状態は個々の投手によってさまざまだ。どれだけケアを施していても、故障を引き起こしてしまうことはある。

 岩佐の場合、過去にも故障歴があった。今年春の滋賀県大会はベンチ入りしていなかったというから、古傷が再発した可能性もある。

 しかし、この件は近江だけの問題として片付けるべきではないだろう。毎試合登板をさせたことが悪い、故障歴のある岩佐へのケアを怠った、と多賀監督の起用法だけを批判するのは早計だ。

 今こそ、検証が必要ではないか。ましてや今大会は雨の影響で6度の順延があり、もともとあった休養日が削られている。

 日本高野連は健康問題をテーマとしながら、「3連戦の回避」だけに絞り、全体の日程緩和には目を向けなかった。近江がその影響を受けたという見方はできるだろう。

 何せ、近江は2回戦の大阪桐蔭戦から中2日で3回戦を戦い、その翌日に準々決勝。そこから休養日を1日挟み、準決勝に臨んでいた。2回戦から6日間で4試合をこなしている。決勝に進んでいたら、7日間で5試合だったことになる。
 岩佐の投球数それほど多くないとはいえ、負けられない試合が続く中で、どれだけの負担がかかっていたかは想像に難くない。

 思えば、今年の春のセンバツで、準決勝に進出した中京大中京のエース・畔柳享丞が右ヒジに痺れを感じて、途中降板したことがあった。今年から本格導入された球数制限に抵触はしなかったが、日程面など不利な状況が畔柳を追い詰めたのではないかという意見は少なくなかった。

 しかし、日本高野連はこの件を「経過観察」として、記者会見すら開かなかった。高校球児がヒジの痛みに耐えかねて降板したのに、だ。

 岩佐の右ヒジ炎症は避けられたのかどうか。

 その検証とともに、日本高野連には真摯な姿勢で会見を開いてもらいたい。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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