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プロ野球

異例だった開幕前の退任発表。矢野監督の言葉に「正直あまり聞きたくなかった」と漏らした虎戦士の掲げる想い

チャリコ遠藤

2022.02.06

プロ10年目となる今季に再起をかける藤浪。そんな右腕が矢野監督の決断に漏らした言葉とは。(C)THE DIGEST

プロ10年目となる今季に再起をかける藤浪。そんな右腕が矢野監督の決断に漏らした言葉とは。(C)THE DIGEST

 驚きの発表から一夜明けて迎えたキャンプ初日。他の選手たちもそれぞれ口を開いた。

 チーム最年長のベテランである糸井嘉男は、「寂しさもあり、正直あまり聞きたくないというか、そういう気持ちでしたけど、僕らにできることは最高の胴上げを絶対に今シーズンするという。それだけを目指して今日から頑張ります」と吐露。そして、ドラフトで交渉権を獲得するクジを引き、自身にとって初めてのプロ野球の監督だった佐藤輝明は、坂本と同じく「体現」というフレーズを使って胸の内を明かした。

「(このタイミングでの退任表明は)監督らしいなと。しっかり言葉にしてっていうところが、監督らしいなと思いました。最初のプロ野球の監督ですし、すごい色々教えてもらったことがある。教えてもらった野球を体現して監督を男にできるよう頑張っていきたい」

 矢野監督自身が「賛否両論いろんな意見があることも想像して」と覚悟したようにSNS上でも、今回の決断にはファンの様々な意見が飛び交った。「覚悟が伝わった」という声があがった一方で、「辞めると決めた上司についていくかと聞かれると求心力は落ちる気がする」などの厳しい声も少なくなかった。

 それでも、大きなマイナス要素は生まれないと理論派の指揮官ならでは考えがあっての表明だったはずだ。3年間でのチームの成熟度に手応えを深めているのは確かだ。
 
「本当に良いチームになってきている手応えがすごくある。中身というか、みんなの姿勢というか。今の俺のキャパで伝えられることは、この3年間で全力で伝えてきた。(今年は)その集大成、俺の勝手な個人としての集大成としてね。1年間やりきるというところにみんなきてくれたなというのはあったんで」

 発表から数日経ってあらためて考えてみても、決断の善し悪しは分からない。そのなかで、一聴しただけではドライに聞こえても、「矢野さんが辞める、辞めないに限らず活躍したいので」と言った藤浪晋太郎の言葉がスッと胸に入ってきた。

 筋書きのあるドラマなら優勝への“前フリ”となる。だが、ここはシビアで残酷なプロ野球の世界。技術の高みを目指す選手が最高のシーズンを追い求める結集が、チームをエモーショナルな終着点に導く。船出を前に終わりの始まりを告げた矢野タイガースの航海の行方は――。

取材・文●チャリコ遠藤

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