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プロ野球

高卒新人で「完全試合の立役者」となった松川虎生とは? アマ野球ライターが記録した市和歌山時代を振り返る

THE DIGEST編集部

2022.04.16

 一方、守備については2.00秒を切れば強肩と言われるセカンド送球でコンスタントに1.90秒前後をマークしているのがよく分かる。地肩の強さだけではなく、フットワークの良さも当時から目立っていた。しかし送球が左右にぶれるケースも目立ち、東播磨戦、県岐阜商戦では盗塁を許すなど実戦でのスローイングには不安が残ったことも確かである。

 キャッチングについても、春夏の甲子園で話題となった中川勇斗(京都国際→阪神)と比べるとそこまで安定していたという印象はない。ただ、今回改めてこの4試合の記録について調べてみたところ、後逸は1つもなく、しっかりと止められていたことも確かである。当時バッテリーを組んでいた小園健太(DeNA)のコントロールが高校生離れしていたがゆえに、松川の捕球技術に目が行かなかったというのもあるだろう。

 当時のノートを見返していてもうひとつ注目したのが配球面だ。これも小園というレベルの高い投手が投げていたという部分は大きいものの、接戦となった県岐阜商戦では2つ、明豊戦でも1つ併殺打を完成させており(この時の投手は米田天翼)、走者を背負った場面でも内野ゴロを意図的に打たせていたように見えたのだ。

 これは投手の力量だけではなく、バッテリー間、さらには内野手まで含めた意思の疎通ができていたと分析できる。プロでも投手はもちろん、他の選手と積極的にコミュニケーションをとる姿が目立つが、ゲーム全体をリードする能力は高校時代から際立っていたのは間違いない。

 順調なプロ野球人生のスタートを切った松川だが、持っている潜在能力はまだまだこんなものではない。冒頭でも触れたように打撃に関しても非凡なものがあるだけに、球界を代表する“打てる捕手”にもなれるはずだ。今後は守備面だけでなく、打撃面でも我々を驚かせるようなパフォーマンスを見せてくれると期待したい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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