日本シリーズはちょっとしたことで流れが変わる。
不調だった選手はそのまま不調でシリーズを終わらせるのが鉄則だが、この日は中川、杉本に復活のチャンスを与えてしまった。
そして、第4戦は0対1で完封負け。
先発した山岡泰輔から宇田川優希、山﨑颯一郎、ワゲスパックとうまく繋がれた。その一方、杉本に決勝打を許した。
第5戦は幸先よく先行し、逆転を許したものの再逆転した。ところが9回裏に、マクガフが大乱調となり、最後は相手の主砲、吉田正尚にサヨナラ本塁打を浴びた。眠っていた吉田さえ目覚めさせてしまった。
そんな流れのなかで、この日を迎えていた。
5回まで投手戦で推移した中で、6回表にピンチを迎える。2死二塁のピンチを迎えて、吉田正尚を申告敬遠で歩かせたが、杉本にライト前へのタイムリーを打たれたのだ。
完封負けを喫し、王手を掛けられてしまったのだ。
思い返すと、シリーズの第1戦目は村上宗隆の後を打つオスナが活躍し、一方のオリックスは吉田の後を打つ杉本のバットが湿っていた。いわば、5番が明暗を分けた。だが、この日はまったく逆の形で、吉田正尚の後を任された杉本がきっちり仕事を果たして勝利に導いている。
シリーズの趨勢はひっくり返ったといっていい。
高津監督はこう振り返っている。
「(吉田を)歩かせて杉本で勝負にいっているわけですから、そこで1本打たれたら厳しい状況になる。そういう中でのあの投球だったので、結果的にはボールが甘くなってしまった。そうなったら打たれますよね」
一方の殊勲となった杉本は手応えを口にしている。
「日本一のバッターの後ろを打っているので、正尚が歩かされるのは仕方のないことだと思っている。(先制点の場面では)準備ができていました。甘いところに来た球を1球で仕留める。その意識で打席に立ちました。結果が出てよかったです。日本一が手の届くところまで来ているけど、僕は攻めて行くだけです」
主砲・村上のバットから快音が消え、オリックス救援陣を打ち崩す手立てもない中で、さらに裏目に出たこの日のマクガフの投入。もう後がない。
それでも高津監督は前を向く。
「ここまで来たら、勝つしかない。勝つために全力を尽くします。できることを、全て準備してそれで勝つか負けるかはもうやってみないとわからない。全力を尽くして準備して明日のプレイボール持ちたい」
もう手詰まりといっていい。
そんななか、指揮官はこの状況を打開する打ち手を見つけ出せるだろうか。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
不調だった選手はそのまま不調でシリーズを終わらせるのが鉄則だが、この日は中川、杉本に復活のチャンスを与えてしまった。
そして、第4戦は0対1で完封負け。
先発した山岡泰輔から宇田川優希、山﨑颯一郎、ワゲスパックとうまく繋がれた。その一方、杉本に決勝打を許した。
第5戦は幸先よく先行し、逆転を許したものの再逆転した。ところが9回裏に、マクガフが大乱調となり、最後は相手の主砲、吉田正尚にサヨナラ本塁打を浴びた。眠っていた吉田さえ目覚めさせてしまった。
そんな流れのなかで、この日を迎えていた。
5回まで投手戦で推移した中で、6回表にピンチを迎える。2死二塁のピンチを迎えて、吉田正尚を申告敬遠で歩かせたが、杉本にライト前へのタイムリーを打たれたのだ。
完封負けを喫し、王手を掛けられてしまったのだ。
思い返すと、シリーズの第1戦目は村上宗隆の後を打つオスナが活躍し、一方のオリックスは吉田の後を打つ杉本のバットが湿っていた。いわば、5番が明暗を分けた。だが、この日はまったく逆の形で、吉田正尚の後を任された杉本がきっちり仕事を果たして勝利に導いている。
シリーズの趨勢はひっくり返ったといっていい。
高津監督はこう振り返っている。
「(吉田を)歩かせて杉本で勝負にいっているわけですから、そこで1本打たれたら厳しい状況になる。そういう中でのあの投球だったので、結果的にはボールが甘くなってしまった。そうなったら打たれますよね」
一方の殊勲となった杉本は手応えを口にしている。
「日本一のバッターの後ろを打っているので、正尚が歩かされるのは仕方のないことだと思っている。(先制点の場面では)準備ができていました。甘いところに来た球を1球で仕留める。その意識で打席に立ちました。結果が出てよかったです。日本一が手の届くところまで来ているけど、僕は攻めて行くだけです」
主砲・村上のバットから快音が消え、オリックス救援陣を打ち崩す手立てもない中で、さらに裏目に出たこの日のマクガフの投入。もう後がない。
それでも高津監督は前を向く。
「ここまで来たら、勝つしかない。勝つために全力を尽くします。できることを、全て準備してそれで勝つか負けるかはもうやってみないとわからない。全力を尽くして準備して明日のプレイボール持ちたい」
もう手詰まりといっていい。
そんななか、指揮官はこの状況を打開する打ち手を見つけ出せるだろうか。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。