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侍ジャパン

「コロナで甲子園を奪われた世代」の代表として腕を振る――最年少で侍ジャパン入りした高橋宏斗の決意<SLUGGER>

氏原英明

2023.02.19

 筆者自身、こんな質の高いストレートは見たことがなかった。たった1試合だけしか見ることができなかったが、これが彼が持つ能力の片鱗なのだろう。本来ならもっと騒がれるべき選手だと、その時に思った。

 試合後に高橋宏が語った言葉も印象に残っている。素直な心情を真っさらに表現した少ないコメントだった

「自分だけの力ではなくて、サポートしてくれた周りの声があったからここまで来ることができました。自分の力ではできなかった。今回の対戦で多くのことを感じたので、野球人生に生かしていきたい」

 合宿2日目、あの日以来初めて会った高橋宏と話をしていて、当時の光景がフラッシュバックした。

 昨季、高橋宏は19試合に登板、6勝を挙げて防御率2.47をマーク。規定投球回には届かなかったものの、ファーストブレイクとも言える活躍を見せた。ストレートの最速は158キロまで到達。そして、何と言っても彼の持ち味は空振り/スイング率が高さ。昨季は12球団ではダントツトップの33.7%を記録した。その能力が評価されての今回の代表選出だったと言える。

「自分は先発ができますし、中継ぎももちろんやれるので、どのポジションをやるのか、どんな場面で投げるのかに関係なく、自分の力を発揮できればなと思います」
 
 そうWBCへの意気込みを語った高橋宏は、この合宿ではオフの自主トレで教えを乞うた山本由伸(オリックス)とともに行動し、屈託のない笑顔を見せている。「由伸さんと久しぶりに会えたので嬉しいです。(合宿は)緊張しますけど、超楽しい」と語る。

 最年少での選出。それも、コロナで甲子園を奪われた世代唯一の選手ということで、その想いを聞いてみた。

 高橋は自らに確認するかのようにこう語った。

「(コロナで)本当に悔しい思いをしたのは確かです。でも、悔しい思いがあったので、それがレベルアップしたいという気持ちになりました。(プロに入って)ここまでいい形でこれていて、今、ここにいると思います。だから、何とか同世代の悔しい思いをした人たちに僕が活躍するいい姿を見せて、自分自身が鏡となっていけるように頑張りたいです」

 悔し思いを背に、あの世代の代表として――。高橋は全力で腕を振るつもりでいる。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

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