このような状態だったので、MLBの試合は長い間賭博の対象にはなっていなかった。そもそもMLBに限らず他の種目でも、ラスベガスのあるネバダ州以外を除き、すべての州で非合法であった。
しかし裏社会では賭けが行なわれており、その罠に嵌ったのが通算最多安打記録の持ち主であるピート・ローズだった。レッズのスーパースターとして国民的人気を得ていたローズだったが、深刻なギャンブル依存症に陥っており、レッズの監督を務めていた89年、野球賭博に参加していたことが表面化する。
致命的だったのは、彼が自軍の勝敗も対象にしていた点であった。レッズの勝利にのみ賭けていたので敗退行為を演じていたわけではなかったが、それも永久追放を免れる理由にはならなかった。賭博との関連により追放された者は、今のところローズが最後である。ローズはその後何度となく処分の解除を求めているものの、歴代のコミッショナーは誰も応じていない。
こうしてギャンブルとの関わりを拒絶していた球界だったが、近年になって事情が変わってきた。2018年、連邦最高裁がネバダ州以外でもスポーツを対象とした賭博(スポーツ・ベッティング)を合法と認めるとの判断を下したためである。これを受け、各州で合法化が進み、現在でも違法となっているのは全米50州のうちカリフォルニア、テキサス、ジョージアなど12州のみ。水原氏の件も、カリフォルニア州でなければこれほどの大問題にはなっていなかった。 いまやスポーツ・ベッティングは、450億ドル以上の金が動く一大産業。他のスポーツに比べると慎重な姿勢を維持しているMLBでも、ロブ・マンフレッド・コミッショナーは野球人気上昇の切り札と見なしており、22年にはMLBネットワークがベッティング番組の放送を開始した。野球関連の報道でも「○○の優勝に×倍のオッズがついた」といった記事を目にする機会も多くなっている。このようにオンライン上で気軽に参加できるイメージが拡がっていることも、水原氏が手を出してしまった要因の一つと考えられる。
とはいえ、今でもギャンブルとの関わりには慎重を期さねばならない点は変わりない。水原氏の行動は軽率の極みであり、彼がESPNのインタビューで述べた最初の説明通り、もしも親切心から“友人”の借金を補填したのであれば、大谷も脇が甘すぎたとの謗りは免れない。今回の一件がどのような結末に至るかはわからないが、大谷にとどまらずすべてのメジャーリーグ関係者にとって、野球と賭博との関係性を再認識し、襟を正す機会になったのは確かだ。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
【関連記事】「某友人の借金を肩代わりした」大谷翔平が水原一平氏による“衝撃の新たな嘘”を激白!「一平さんは取材依頼を僕に話さなかった」
【記事】「すげぇ裏切りじゃないか!」「完全無罪」大谷翔平が違法賭博騒動への初声明で“12分間激白”にネットは議論百出!「米メディアは納得する?」
しかし裏社会では賭けが行なわれており、その罠に嵌ったのが通算最多安打記録の持ち主であるピート・ローズだった。レッズのスーパースターとして国民的人気を得ていたローズだったが、深刻なギャンブル依存症に陥っており、レッズの監督を務めていた89年、野球賭博に参加していたことが表面化する。
致命的だったのは、彼が自軍の勝敗も対象にしていた点であった。レッズの勝利にのみ賭けていたので敗退行為を演じていたわけではなかったが、それも永久追放を免れる理由にはならなかった。賭博との関連により追放された者は、今のところローズが最後である。ローズはその後何度となく処分の解除を求めているものの、歴代のコミッショナーは誰も応じていない。
こうしてギャンブルとの関わりを拒絶していた球界だったが、近年になって事情が変わってきた。2018年、連邦最高裁がネバダ州以外でもスポーツを対象とした賭博(スポーツ・ベッティング)を合法と認めるとの判断を下したためである。これを受け、各州で合法化が進み、現在でも違法となっているのは全米50州のうちカリフォルニア、テキサス、ジョージアなど12州のみ。水原氏の件も、カリフォルニア州でなければこれほどの大問題にはなっていなかった。 いまやスポーツ・ベッティングは、450億ドル以上の金が動く一大産業。他のスポーツに比べると慎重な姿勢を維持しているMLBでも、ロブ・マンフレッド・コミッショナーは野球人気上昇の切り札と見なしており、22年にはMLBネットワークがベッティング番組の放送を開始した。野球関連の報道でも「○○の優勝に×倍のオッズがついた」といった記事を目にする機会も多くなっている。このようにオンライン上で気軽に参加できるイメージが拡がっていることも、水原氏が手を出してしまった要因の一つと考えられる。
とはいえ、今でもギャンブルとの関わりには慎重を期さねばならない点は変わりない。水原氏の行動は軽率の極みであり、彼がESPNのインタビューで述べた最初の説明通り、もしも親切心から“友人”の借金を補填したのであれば、大谷も脇が甘すぎたとの謗りは免れない。今回の一件がどのような結末に至るかはわからないが、大谷にとどまらずすべてのメジャーリーグ関係者にとって、野球と賭博との関係性を再認識し、襟を正す機会になったのは確かだ。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
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