成績こそ低迷しているが、栗山の優れた打席アプローチは健在だ。ヒットになりにくいようなボールには手を出さないし、それは甘い球であっても同じ。彼なりのストライクゾーンがあり、そこを設定しながらボールにコンタクトしていく。
「クリの打席がね、本当に1打席1打席意味があるんですよね。若い選手に見習ってほしい」と渡辺監督代行も口にするほどで、当然、岸に与えている影響も大きい。
岸は言う。
「狙ってないボールにわざわざ手は出せなくなりました。今まではどんな球にも反応して全部を打とうとしていていたんです。ちゃんと自分が打てるところを当てに行くということができるようになりました」
日々の練習で技術を上げることはもちろん、大先輩の打席アプローチを間近で観察できるようになったことは、岸を大きく成長させている。「特等席です」という表現からも、重圧に苦しむことなく4番という重責に向き合っていることがうかがえる。
そして、岸の特筆すべき点は勝負強さだ。6月25日の日本ハム戦、28日の楽天戦では先制タイムリーを放ち、勝利に貢献した。4番抜擢からの6試合で6打点。期待以上の活躍を見せている。
もっとも、岸は4番に座る以前からここ一番での活躍は目立っていた。5月26日のオリックス戦では、クローザーのマチャドから8回裏に3ラン本塁打を放つなど、西武の勝利の場面に必ずといって言いほど顔を出しているのが岸だった。
「一発で仕留める力がある。運っていうか、甲子園のスターだからそういうのを持っているのかもね」 渡辺久信監督代行はそう語ったが、「それは関係ないですね」と完全否定する岸には、野球選手として長く染みついているマインドがある。
「僕は対戦する投手を意識しますね。だから、言い方は悪いですけど『こいつからは打ちたい』と思って打席に入っています。受け身になるのが自分は嫌で、いい意味で上からというか。言い方を変えれば『俺ならいける』なのかもしれないけど、それだと慢心みたいなので『こいつから打つ』。そういう意識は持っています」
チームスポーツとは言っても、打席に入れば相手投手との「個と個」の勝負。その中で、岸は自分を奮い立たせながらピッチャーと対峙しているのだ。
「自分がレギュラーとはまだ思っていないですけど、試合に出ることが増えてきて(身体の)ケアの難しさを感じます。本当に、毎日、身体(のコンディション)が違うんで。そこを難なくこなしているように見えるレギュラーの人はすごいと思うし、それができてこそレギュラーなんやろなと思います」
定位置獲得に加え、4番に抜擢された激動のシーズン。岸潤一郎は今や、西武に必要不可欠な存在となっている。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
【関連記事】若林放出が西武に与えた衝撃。主力を目指す選手たちの危機感が低迷脱出のカギに?<SLUGGER>
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岸は言う。
「狙ってないボールにわざわざ手は出せなくなりました。今まではどんな球にも反応して全部を打とうとしていていたんです。ちゃんと自分が打てるところを当てに行くということができるようになりました」
日々の練習で技術を上げることはもちろん、大先輩の打席アプローチを間近で観察できるようになったことは、岸を大きく成長させている。「特等席です」という表現からも、重圧に苦しむことなく4番という重責に向き合っていることがうかがえる。
そして、岸の特筆すべき点は勝負強さだ。6月25日の日本ハム戦、28日の楽天戦では先制タイムリーを放ち、勝利に貢献した。4番抜擢からの6試合で6打点。期待以上の活躍を見せている。
もっとも、岸は4番に座る以前からここ一番での活躍は目立っていた。5月26日のオリックス戦では、クローザーのマチャドから8回裏に3ラン本塁打を放つなど、西武の勝利の場面に必ずといって言いほど顔を出しているのが岸だった。
「一発で仕留める力がある。運っていうか、甲子園のスターだからそういうのを持っているのかもね」 渡辺久信監督代行はそう語ったが、「それは関係ないですね」と完全否定する岸には、野球選手として長く染みついているマインドがある。
「僕は対戦する投手を意識しますね。だから、言い方は悪いですけど『こいつからは打ちたい』と思って打席に入っています。受け身になるのが自分は嫌で、いい意味で上からというか。言い方を変えれば『俺ならいける』なのかもしれないけど、それだと慢心みたいなので『こいつから打つ』。そういう意識は持っています」
チームスポーツとは言っても、打席に入れば相手投手との「個と個」の勝負。その中で、岸は自分を奮い立たせながらピッチャーと対峙しているのだ。
「自分がレギュラーとはまだ思っていないですけど、試合に出ることが増えてきて(身体の)ケアの難しさを感じます。本当に、毎日、身体(のコンディション)が違うんで。そこを難なくこなしているように見えるレギュラーの人はすごいと思うし、それができてこそレギュラーなんやろなと思います」
定位置獲得に加え、4番に抜擢された激動のシーズン。岸潤一郎は今や、西武に必要不可欠な存在となっている。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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