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MLB

抵抗運動も空しくオークランドからの移転が決定、「身売りしろTシャツ」もまばらに...A'sファンに漂う“諦念感”<SLUGGER>

豊浦彰太郞

2024.07.05

 翌日は、前述の通りワールドシリーズ3連覇達成の50周年記念試合で、当時のグリーンとゴールドのレプリカユニフォームが配布されるプロモーション・デーもあった。ユニフォームを手に入れるべく、開門前からゲートに並ぶ。ゲートが開くと首尾良くゲットしたユニを着用し、センタースタンド背後のバー&レストラン『イーストサイド・クラブ』に向かう。ここには球団の殿堂もあり、レジー・ジャクソン、リッキー・ヘンダーソンら球団史を飾るスターたちのパネルが誇らしげに飾られている。

 この日は、ここでV3メンバーの一部がサイン会を行うことになっていた。行列に並んでいるのは当時をリアルタイムで観ているであろう世代のファンが圧倒的だった。熟年にとって長時間立って並ぶのはツライ。サイン会が始まるまでは、持ち込んだ折り畳みチェアで寛ぐ者、中にはコンクリートの床に横になる猛者?もいた。これぞオークランドだ。

 3連覇50周年セレモニーと無料レプリカユニの効果は大で、この日の観客数は今季最多の1万8491人。だが、2日間を通して感じたのが地元ファンの諦念感だった。昨年8月にコロシアムを訪れた際は、観客は少なかったものの、その多くは前述の「SELL」Tシャツを着用していたが、今回はほとんど見かけない。一瞬、「着用禁止になったのか?」(言論・表現の自由の国でそんなことはあり得ないが)と思ったほどだった。
 ライトスタンドには鐘や太鼓の鳴り物応援団が陣取っているのだが、この愛すべき軍団の数も減っている。もはや、両手で数えられるほどだ。その彼らも試合が終わると、淡々と帰り支度を始めていた。

 そうそう。この日もA'sは完敗。スコアこそ0対3だったが、6回二死まで相手先発のパブロ・ロペスに対してパーフェクトピッチングを許す完敗だった。

 試合後、深夜便で発つまでの間、サンフランシスコの街中を歩き回った。やたら目についたのが、WAYMOと呼ばれる完全自動運転タクシーの実験車だった(その数日後、実運用に入った)。巨大なセンサーを前後左右、ルーフに装着し、さながら地球防衛軍だ。行きかう車も明らかに電気自動車が増えている。

 時代は確実に変わりつつあるのだ。オークランドでのアスレティックスの日々が終わってしまうのも時代に流れ、と自らに言い聞かせるしかなかった。

文●豊浦彰太郎

著者プロフィール:北米63球場を訪れ、北京、台湾、シドニー、メキシコ、ロンドンでもメジャーを観戦。会社勤めの悲しさでポストシーズンは未体験。好きな街はデトロイト、球場はドジャー・スタジアム、選手はレジー・ジャクソン。「Yahoo!」「JSPORTS」でも執筆中。

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