▼ア・リーグ新記録樹立のシーズン62号
(第220号:2022年10月4日)
22年は17年を上回るペースでホームランを量産。夏を迎える頃には、1961年にロジャー・マリス(ヤンキース)が打ち立てたシーズン61本塁打のアメリカン・リーグ記録更新を期待する声が上がった。9月20日に60号を放ち、マリスの記録にあと1本と迫った時点では、残り15試合が残されていた。全米の注目も一段と高まったが、そこから7試合は音なし。
28日のブルージェイズ戦で61号が出たが、そこからまた5試合一発が出ない。気づけば残り試合も徐々に少なくなり、ジャッジ自身も毎試合7回を迎える頃には「残り1打席しかない、何とかしないと」という胸中だったという。
それでも、シーズン161試合目のレンジャーズ戦でようやく歓喜の瞬間が訪れる。ダブルヘッダー2試合目の第1打席、ヘスス・ティノコが投じた甘いスライダーを打ち砕くと、打球は低い弾道でレフトスタンドへ飛び込んだ。61年ぶりの新記録誕生に敵地グローブライフ・フィールドは大歓声に包まれたが、打った本人は淡々とした様子でダイヤモンドを一周。ホームベース周辺に集まった仲間から祝福されてようやく表情を崩したが、歴史的快挙にもいつもの紳士然とした姿がいかにもジャッジらしかった。
▼宿命のライバルを震撼させる強烈な一撃
(第293号:2024年7月26日)
乾いた打球音を残し、フェンウェイ・パークのセンター深くへ飛んだボールがスコアボードの真下に飛び込んだ。宿敵レッドソックスとの一戦、1点を追う7回に放った今季36号の逆転3ランの飛距離は470フィート(約143m)。レッドソックスファンのブーイングと、ヤンキースファンの歓声が交差する異様な雰囲気の中、ジャッジは涼しげな顔でベースを一周した。
敵将アレックス・コーラ監督いわく、2007年に強打者マニー・ラミレスが同じエリアまで飛ばしたとのことだが、それ以降では「あそこまで飛ばした選手は見たことがない」と脱帽。ちなみにジャッジは、昨年9月14日にもフェンウェイで逆転のグランドスラムを叩き込んでいる。「フェンウェイでのレッドソックス対ヤンキースに勝るものはない」と語るように、やはり宿命のライバル対決には並々ならぬ思いで臨んでいるようだ。 ▼歴代最速で新たなマイルストーンへ
(第300号:2024年8月14日)
インコースへ食い込むチャド・クール(ホワイトソックス)のシンカーを窮屈そうに叩いたスウィングは、決して美しくはなかったかもしれない。それでも、並の打者であればフライアウトに終わりそうな打球はギャランティード・レイト・フィールドのレフトフェンスを越え、相手ブルペンで弾んだ。
デビュー直後から球界を席巻し続けている規格外のパワーを、トレードマークの豪快弾とはまた違う形で見せつけた通算300号。955試合目での達成は、それまでのラルフ・カイナーの歴代最速記録を一気に132試合も更新してみせた。3431打数目での到達も、ベーブ・ルース(3831)を抜いてやはり歴代最速。アーロン・ブーン監督が「歴史上、ほんの一握りの選手しか達成していないことをやってのけている」と語ったように、この記録でジャッジが「史上有数のスラッガー」として歴史に名を残すことは揺るがなくなったと言っていいだろう。
文●藤原彬
著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。X(旧ツイッター)IDは@Struggler_AKIRA。
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(第220号:2022年10月4日)
22年は17年を上回るペースでホームランを量産。夏を迎える頃には、1961年にロジャー・マリス(ヤンキース)が打ち立てたシーズン61本塁打のアメリカン・リーグ記録更新を期待する声が上がった。9月20日に60号を放ち、マリスの記録にあと1本と迫った時点では、残り15試合が残されていた。全米の注目も一段と高まったが、そこから7試合は音なし。
28日のブルージェイズ戦で61号が出たが、そこからまた5試合一発が出ない。気づけば残り試合も徐々に少なくなり、ジャッジ自身も毎試合7回を迎える頃には「残り1打席しかない、何とかしないと」という胸中だったという。
それでも、シーズン161試合目のレンジャーズ戦でようやく歓喜の瞬間が訪れる。ダブルヘッダー2試合目の第1打席、ヘスス・ティノコが投じた甘いスライダーを打ち砕くと、打球は低い弾道でレフトスタンドへ飛び込んだ。61年ぶりの新記録誕生に敵地グローブライフ・フィールドは大歓声に包まれたが、打った本人は淡々とした様子でダイヤモンドを一周。ホームベース周辺に集まった仲間から祝福されてようやく表情を崩したが、歴史的快挙にもいつもの紳士然とした姿がいかにもジャッジらしかった。
▼宿命のライバルを震撼させる強烈な一撃
(第293号:2024年7月26日)
乾いた打球音を残し、フェンウェイ・パークのセンター深くへ飛んだボールがスコアボードの真下に飛び込んだ。宿敵レッドソックスとの一戦、1点を追う7回に放った今季36号の逆転3ランの飛距離は470フィート(約143m)。レッドソックスファンのブーイングと、ヤンキースファンの歓声が交差する異様な雰囲気の中、ジャッジは涼しげな顔でベースを一周した。
敵将アレックス・コーラ監督いわく、2007年に強打者マニー・ラミレスが同じエリアまで飛ばしたとのことだが、それ以降では「あそこまで飛ばした選手は見たことがない」と脱帽。ちなみにジャッジは、昨年9月14日にもフェンウェイで逆転のグランドスラムを叩き込んでいる。「フェンウェイでのレッドソックス対ヤンキースに勝るものはない」と語るように、やはり宿命のライバル対決には並々ならぬ思いで臨んでいるようだ。 ▼歴代最速で新たなマイルストーンへ
(第300号:2024年8月14日)
インコースへ食い込むチャド・クール(ホワイトソックス)のシンカーを窮屈そうに叩いたスウィングは、決して美しくはなかったかもしれない。それでも、並の打者であればフライアウトに終わりそうな打球はギャランティード・レイト・フィールドのレフトフェンスを越え、相手ブルペンで弾んだ。
デビュー直後から球界を席巻し続けている規格外のパワーを、トレードマークの豪快弾とはまた違う形で見せつけた通算300号。955試合目での達成は、それまでのラルフ・カイナーの歴代最速記録を一気に132試合も更新してみせた。3431打数目での到達も、ベーブ・ルース(3831)を抜いてやはり歴代最速。アーロン・ブーン監督が「歴史上、ほんの一握りの選手しか達成していないことをやってのけている」と語ったように、この記録でジャッジが「史上有数のスラッガー」として歴史に名を残すことは揺るがなくなったと言っていいだろう。
文●藤原彬
著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。X(旧ツイッター)IDは@Struggler_AKIRA。
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