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MLB

「マウンドに上がるまですごく恐怖心があって、足もガタガタ震えてました」今永昇太が語る“日本人対決の舞台裏”と大谷、山本へのリスペクト<SLUGGER>

ナガオ勝司

2024.09.16

「まず初回はゼロに抑えることが大事」。

 それは彼が元巨人のマイルズ・マイコラス投手(カーディナルス)や前田健太投手(タイガース)との対話でつかんだ、メジャー的“先発投手の心得”のようなものだった。結果として今永は、初球攻撃の大谷を遊飛、2球目を打った2番ムーキー・ベッツを中飛、そして、またしても初球を打った3番フレディ・フリーマンを左飛に仕留めた。

 たった4球の三者凡退。初回をセロに抑えた今永はその後も、マイコラスや前田との対話から学んだ“先発投手の心得”を次々に遂行していく。「まず初回はゼロに抑えることが大事」がその第一章だとすれば、第二章は「2回からは自分のリズムを作っていく」ことだ。

 2回、先頭の4番トミー・エドマンに左越えへのソロ本塁打を打たれても、動揺することはなかった。

「ホームラン打たれても、マウンド上で反省しなくていいってのを、メンタルコーチと話し合っていて、反省するのは試合後でいいと。無責任だと思われるかもしれないですけど、開き直って投げることが大事なので、その辺のメンタルの切り替えはコツをつかんだかなというのはありますね」

 マイコラスは今永に、“先発投手の心得”第三章とも言うべき、「イニングの途中で『ここはピンチにしたらまずい』という時に出力を出す」という考えを伝授しているが、そういう場面が続く三回に訪れる。8番キケ・ヘルナンデスと9番オースティン・バーンズに連打を打たれ、無死一、二塁で1番大谷に再び打順が周る。カブス側からすれば最悪の状況である。

 今永はここで、「出力を出す」=「得意の高め速球で押す」ではなく変化球を駆使した。
1球目 外角スライダー       空振り
2球目 外角スライダー       ボール
3球目 高めに浮いたスプリット   ボール
4球目 真ん中スライダー      一ゴロ(3-6-1)併殺

 実はドジャース戦までの5日間、今永は投球練習でも、キャッチボールでもスライダーを入念に練習していた。それは単に「ずっと良くなかったから」だったのだが、頭の片隅に「(対大谷に)投げようとは思っていた」と後に言っている。

「マウンドに上る前は、真っすぐ、チェンジアップ、スライダー、全部、均等に良くないと不安なんです。最低限のレベルではいたかったんですけど、あの日は(試合前の)ブルペンでも良くなくて、試合前、ベイスターズの後輩に『良いスライダーの握り教えてくれよ』って訊いたぐらいです。その後輩からは『分かりました。今から送ります』って返事が来たんですけど、それぐらい良くなかった」

 それでも彼が、ピンチでの「対大谷」にスライダーを選択したのは彼の「勇気」であり、同時に彼が今までのプロ野球生活で培ってきた「勝負勘」が働いたからだろう。大谷を併殺に打ち取り、後続も三ゴロに仕留めて、ピンチを切り抜けた今永は試合後、こう言っている。
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