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MLB

去年とはちょっと違う「新しい自分」を探して――メジャー2年目を迎えた今永昇太が見据える理想像<SLUGGER>

ナガオ勝司

2025.02.14

「MLBってのはいろんな国から、いろんな選手が集まってるわけで、無差別級の格闘技と同じような感覚なんで、もちろん自分のキャパシティ・オーバーの身体になっちゃ駄目だと思うんですけど、強くて損はないと思うんで、ボトムアップ(底上げ)には努めてきました。体重はまったく変わらなかったんですけど、身体の中身と言うか、筋肉量とか体脂肪とかが目に見えて変わってる部分がある。同じ体重でも去年とはちょっと違うのかなと、自分で動いててそういう感覚はあります」

 メジャー1年目の昨季、今永が痛感したことの一つは、レギュラーシーズン162試合という長丁場で、シカゴのように春先は摂氏10度以下になるかと思えば、夏場は30度を余裕で超える高温にもなる環境の変化に対応する中で、体重が落ちてしまったり疲労が抜け切れなかったりするコンディション維持の難しさだった。

「フィジカルの大事さってのは感じていて、長いシーズンを経験していると、僕はたまたま去年、怪我しませんでしたけど、穴を開けない大事さと言うか、時として成績を除外したとしても、いてくれるだけでいいんだっていう、その瞬間があるっていうのは感じた」

 米国メディアとの対話の中では、「やはり、WAR(Wins Above Replacement)が低い」と今永先生らしく、セイバーメトリクスに言及したりもする。

――去年の活躍は、自分の期待を超えた?

「期待を……超えてはないですね。その理由としては、シーズンを終えて自分のスタッツ(成績)とかを見直したりしたんですけど、WARが低いんで。僕と山本(由伸)選手で言うと、僕が3.0で彼が2.8なんですけど、僕よりイニングが少なくても、彼がWARを稼いでいるってことは、彼がかなり質の高い投球を毎試合しているということなので、一見、見栄えは僕の数字がいいかもしれないですけど」
「(新人王の)ポール・スキーンズ(パイレーツ)選手(6.0)と比べても、2倍ぐらい差が開いているので、何勝何敗ではなくて、僕はそこを見ている。もっと本塁打を減らして三振を増やして、イニングも投げるってことをしなければ、アメリカでは評価されないんで、そういう先発投手を目指しています」

 米メディアの中には「フライボール(を打たせる傾向が高い)・ピッチャーのショータは、どうしても被本塁打数が多くなる。だが、彼の場合は走者を溜めて打たれることが少ないので、WARなんて気にする必要がない」という意見もあった。しかし、プロのアスリートたる者、常に「今以上」を望むのは当然であり、173.1イニング(174奪三振)を投げた今永に対し、90イニング(105奪三振)の山本や、新人王に輝いたスキーンズの133.0イニング(170奪三振)は絶好の比較対象になるのだろう。

 昨季、古巣のベイスターズが日本シリーズで優勝したことも、貪欲な彼には絶好の「糧(かて)」となっているようだ。

「……嬉しかった反面、悔しさとはまた違うような、何で自分がいる時にできなかったんだろう? っていう気持ちを持たなきゃいけないっていう、両極端(の気持ち)を持っていたので、心から祝福できたかと言うとそうじゃないですけど、純粋に苦楽をともにした選手たちが涙している姿を見ていたので、僕は今、アメリカにいるわけなんで、よく皆に、『Turn the page(ページをめくる=気持ちを切り替えるという意味)』って言われますけど、お前は今、ここにいるんだからって言われますけど、新しい自分になれるように、頑張りたいなと思います」

 日本開幕だろうが、開幕投手だろうが、戦場と役割が与えられたなら何でもやってやる。敵役だろうが、脇役だろうが、自分のやるべきことは決まっている。

 目指すものはただ一つ。

 去年とはちょっと違う、「新しい自分」。

 そうなれるように彼は、立ち止まることなく、今日もまた歩み続けているのだろう――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO

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