NBAのヘッドコーチ(HC)は、プロスポーツの中でもとりわけ過酷な職業だ。戦術や起用法に頭を悩ませながらチームを勝利に導いても、称賛の多くは選手に集まる。一方、チームが苦境に陥れば、コーチはまず批判の矢面に立たされる。加えて、スター選手との関係が悪化すると、解雇されることも少なくない。
そんな報われにくい職業だが、もし歴代屈指のスーパースターを指導することになれば話は別だ。選手がチームを頂点へ導くだけでなく、コーチの評価まで押し上げてくれることがある。
現在ロサンゼルス・クリッパーズの指揮を執るタロン・ルーにとって、その存在こそがレブロン・ジェームズだった。
18歳でNBA入りしたレブロンは、これまでクリーブランド・キャバリアーズとロサンゼルス・レイカーズを1回、マイアミ・ヒートを2回優勝に導き、すべてでファイナルMVPを獲得。ほかにもシーズンMVP4回、オールNBAチーム選出21回、歴代トップの通算4万3127得点、総出場時間6万497分と、挙げればキリがないほどの実績を誇る。
その圧倒的な実績の裏には、コート上の才能だけでなく、試合の流れを読み切る卓越したバスケットボールIQがあった。
かつて2人と共闘したイマン・シャンパートは、元NFL選手のシャノン・シャープがホストを務めるポッドキャスト『Club Shay Shay』で、当時の驚くべきエピソードを明かしている。
2015~18年までキャブズに在籍したスウィングマンによれば、レブロンはプレーオフの試合前ミーティングの場で、コーチ陣のゲームプランを自ら変更することがあったという。
「相手がデトロイト(ピストンズ/2016年のプレーオフ1回戦で対戦)だった時、ブロンはこう言った。『あいつらはバッドボーイズみたいなバスケをしてくる。フィジカルなビッグマンが2人いるから、今日はずっとホーンズアクション(2人のビッグマンをフリースロー付近に置き、ボールハンドラーがスクリーンを使って攻めるセットプレー)をやる』ってね」
ただ、2015-16シーズンのキャブズは、ホーンズセットをほとんど使用していなかった。
「俺たちは『今までの(スクリーンの角度を変えた)アングルのピック&ロールでうまくいってきたじゃないか』と言った。でもブロンは『あの2人のビッグマンと正面から戦う必要はない。これは1回戦だし、次のシリーズまで身体を万全にしたい』と言い切った。
俺は心の中で、『マジかよ、コーチが作ったゲームプランを捨てるってことか?』って思った。でも彼(レブロン)はチームに向かって『そうだ』と示したんだ」
実際、コーチがプレーを指示した直後にレブロンがホワイトボードをつかみ、「いや、こうする」と戦術を書き換える場面もあったという。ルーHCはそれを見て「なるほど、それでいこう」と頷いたこともあった。
NBAのプレーオフでは、コーチ陣が何時間もかけてスカウティングと戦術を練り上げる。相手チームの特徴、ディフェンスのローテーション、攻撃のセットプレーまで、細部に至るまで分析する。
しかし、百戦錬磨の“キング”であるレブロンは、ほぼすべてのディフェンスと戦術を熟知していた。相手のプレーや狙いを瞬時に読み取り、まるで“もう1人のコーチ”のように最適解を導き出した。
ルーは2016年にキャブズを球団初優勝に導き、2020年から現在までクリッパーズで指揮を執り続けている。
シャンパートはレブロンを「NBAの ChatGPT」と評し、「何でも聞けば答えてくれる。コーチ陣やアシスタント、選手育成についても全部知っている。ほかの選手がひとつだけヒントをくれるところを、レブロンは学習曲線ごと全部教えてくれる」と、その知識量に感服していた。
構成●ダンクシュート編集部
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現在ロサンゼルス・クリッパーズの指揮を執るタロン・ルーにとって、その存在こそがレブロン・ジェームズだった。
18歳でNBA入りしたレブロンは、これまでクリーブランド・キャバリアーズとロサンゼルス・レイカーズを1回、マイアミ・ヒートを2回優勝に導き、すべてでファイナルMVPを獲得。ほかにもシーズンMVP4回、オールNBAチーム選出21回、歴代トップの通算4万3127得点、総出場時間6万497分と、挙げればキリがないほどの実績を誇る。
その圧倒的な実績の裏には、コート上の才能だけでなく、試合の流れを読み切る卓越したバスケットボールIQがあった。
かつて2人と共闘したイマン・シャンパートは、元NFL選手のシャノン・シャープがホストを務めるポッドキャスト『Club Shay Shay』で、当時の驚くべきエピソードを明かしている。
2015~18年までキャブズに在籍したスウィングマンによれば、レブロンはプレーオフの試合前ミーティングの場で、コーチ陣のゲームプランを自ら変更することがあったという。
「相手がデトロイト(ピストンズ/2016年のプレーオフ1回戦で対戦)だった時、ブロンはこう言った。『あいつらはバッドボーイズみたいなバスケをしてくる。フィジカルなビッグマンが2人いるから、今日はずっとホーンズアクション(2人のビッグマンをフリースロー付近に置き、ボールハンドラーがスクリーンを使って攻めるセットプレー)をやる』ってね」
ただ、2015-16シーズンのキャブズは、ホーンズセットをほとんど使用していなかった。
「俺たちは『今までの(スクリーンの角度を変えた)アングルのピック&ロールでうまくいってきたじゃないか』と言った。でもブロンは『あの2人のビッグマンと正面から戦う必要はない。これは1回戦だし、次のシリーズまで身体を万全にしたい』と言い切った。
俺は心の中で、『マジかよ、コーチが作ったゲームプランを捨てるってことか?』って思った。でも彼(レブロン)はチームに向かって『そうだ』と示したんだ」
実際、コーチがプレーを指示した直後にレブロンがホワイトボードをつかみ、「いや、こうする」と戦術を書き換える場面もあったという。ルーHCはそれを見て「なるほど、それでいこう」と頷いたこともあった。
NBAのプレーオフでは、コーチ陣が何時間もかけてスカウティングと戦術を練り上げる。相手チームの特徴、ディフェンスのローテーション、攻撃のセットプレーまで、細部に至るまで分析する。
しかし、百戦錬磨の“キング”であるレブロンは、ほぼすべてのディフェンスと戦術を熟知していた。相手のプレーや狙いを瞬時に読み取り、まるで“もう1人のコーチ”のように最適解を導き出した。
ルーは2016年にキャブズを球団初優勝に導き、2020年から現在までクリッパーズで指揮を執り続けている。
シャンパートはレブロンを「NBAの ChatGPT」と評し、「何でも聞けば答えてくれる。コーチ陣やアシスタント、選手育成についても全部知っている。ほかの選手がひとつだけヒントをくれるところを、レブロンは学習曲線ごと全部教えてくれる」と、その知識量に感服していた。
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