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すべては「NBAでタイトルを勝ち獲る」ため。大器ウェンバンヤマの“波瀾万丈”シーズン序盤戦<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2023.12.29

開幕30試合でわずか5勝とチームは最下位に沈むが、ウェンバンヤマはブロックでリーグ首位など奮闘を見せている。(C)Getty Images

 11月5日から12月13日にかけて、悪夢の18連敗で球団ワースト記録を更新してしまったサンアントニオ・スパーズ。12月15日のロサンゼルス・レイカーズ戦に勝利してようやくトンネルを抜けたが、その次の試合からまた5連敗と試練が続いている。

 ただそのなかにおいても、今年のドラフト全体1位で入団した怪物ルーキー、ヴィクター・ウェンバンヤマは、チームトップの平均18.8点に10.4リバウンド、3.19ブロックをマーク。これまで出場した27試合の半数以上にあたる14試合でダブルダブルをマークしている。

 11月18日のメンフィス・グリズリーズ戦では19得点、13リバウンドに驚異の8ブロックでトリプルダブルに迫り、1試合平均のブロック数ではリーグ首位と、得意分野できっちり数字を出している。

 そうした自身の活躍があればなおさら、それが結果につながらないのは精神的にもきつい状況だろう。12月23日のダラス・マーベリックス戦では、試合前のウォームアップの際にコートサイドにいたスタッフの足を踏んでしまい、足首を痛めて欠場するという不運もあった。

 しかしそういった体験も含めて、ウェンバンヤマはあらゆることを「NBAタイトルを勝ち獲る」という究極の目標に向けての通過点だと捉えている。と同時に、サンアントニオでの新生活も徐々に落ち着いてきているようだ。
 
 入団当初はダウンタウンの近くにアパートを借りていたが、つい最近、よりトレーニング場に近い郊外の閑静な街に家を購入したという。

 ダウンタウンから20kmほどの距離にあるこのシャバノ・パークという街には、かつてはデイビッド・ロビンソンやマット・ボナーといったスパーズの先輩選手も居を構えていた。

 初めて異国で暮らす今シーズンは、両親のどちらかが交代でサンアントニオに残り、生活をともにしている。また、ルディ・ゴベアやニコラ・バトゥーム、エバン・フォーニエら、フランスの先輩選手たちの代理人でもあるブウナ・エンダイエは同じテキサス州のダラスを拠点にしており、時折様子を見に訪れているようだ。

 もともと余暇には絵を描いたり読書をして過ごすのが好きだというウェンバンヤマは、アメリカに拠点を変えても「同じ過ごし方をしている」と語っている。ヨーロッパ時代よりも移動が多くなったことで、「以前よりも読書量は増えた」と、トレーニング後のメディアセッションで話していた。トレーニングの時間はフランス時代よりも少ないため、家族や友達と一緒に過ごせる時間は多くなったのだそうだ。

 サンアントニオのダウンタウンにはフランス料理のビストロがあり、そこでディナーを楽しんだり、フランス産のチーズやハムを使ったサンドイッチなどをテイクアウトしているという。ゴベアとツーショットで店を訪れたこともあるそうだ。

 そんなこんなで、アメリカでの新生活は「すこぶる順調」だと本人も口にしているが、唯一の気掛かりはやはり「勝利を手に入れられないこと」。

 昨季は母国の中堅クラブだったメトロポリタンズ92を、ファイナルにまで導くという輝かしい経験をしただけに、パフォーマンスが結果に反映されない状況は堪えるだろうが、リーグを沸かせるルーキーはまだ19歳。

 12月28日の最新のゲームではNBA史上初、30分未満の出場で30得点、7ブロックをマークし勝利に導くなど、新たな歴史を作り続けている。

 チームとしては苦しいシーズンになっているが、若き大黒柱はこの体験すらもプラスに転換し、未来への活力源としていくに違いない。

文●小川由紀子
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