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シーズン終盤に欧州から異例のNBA挑戦!セルビアのトリスタン・ブクチェビッチとは何者か<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2024.03.29

3月14日にウィザーズに入団したブクチェビッチ。イタリアで生まれ、セルビア、ギリシャ、スウェーデンの国籍も持つ。(C)Getty Images

 シーズンも終盤に差し掛かる3月中旬という異例の時期に、将来有望なセルビアのビッグマンが、ワシントン・ウィザーズに入団した。

 元セルビア・モンテネグロ代表のスウィングマン、デュサン・ブクチェビッチを父に持つ、トリスタン・ブクチェビッチだ。

 21歳の誕生日を迎えた3日後の3月14日にウィザーズ入団が発表されると、23日のトロント・ラプターズ戦でNBAデビュー。背番号『00』をつけた208cmのルーキーは3分ほどコートに立って1リバウンドのみに終わったが、2日後のシカゴ・ブルズ戦では2本の3ポイントシュートを沈めるなど、9分間で6得点、3リバウンドという数字を記録した。

 試合後、1月下旬に暫定ヘッドコーチに就任したウィザーズ指揮官のブライアン・キーフは、「彼は何本かスリーを決め、さらにリム周りもよくカバーしていた。彼のようなバスケIQのある選手が我々のプログラムの一員であることをとても嬉しく思う」と会見の席でコメント。
 
 ブクチェビッチはセルビア国営放送『RTS』のマイクに向かって、「コーチからの信頼を嬉しく感じている。ヨーロッパではなかなか難しい状況だったけれど、ここではまた、完全にプレースタイルをチェンジしなくてはならない。ここでプレーしているバスケは別物だからね。でもそれは僕にとっては少しも問題じゃない。日々学んでいるし、プレーすればするほど、良くなっているのを実感できている」とNBAでの手応えを語った。

 彼いわく、シカゴには大きなセルビア人コミュニティがあるそうで、彼らが敵方ながら応援に駆けつけてくれたという。

 ブクチェビッチは、昨年5月にシカゴで行なわれたNBAドラフトコンバインに参加して得意の3ポイントショットで関係者にインパクトを与えると、6月のドラフトでウィザーズから全体42位で指名を受けた。

 その後すぐに入団、とはならなかったが、3月13日、所属していたセルビアのクラブ、パルチザンのオストヤ・ミヤイロビッチ会長がXに、「我々のトップチームの選手であるトリスタン・ブクチェビッチは、バイアウト条項を発動し、NBAでキャリアを歩むことになった」と投稿。

 続けて「7ケタの報酬は、前々からの合意に従い、(古巣の)レアル・マドリーとパルチザンで分け合うことになる」と記し、選手とクラブ側、双方にとって納得のいく移籍であったことを明かした。
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欧州では出番を掴めなかったが、実力と伸びしろは確か