パリ五輪

【パリ五輪】順当に勝ち上がるバスケ米国代表の裏で、波紋を呼ぶ“選考騒動”。責任者のヒルは「理解を得られると信じている」<DUNKSHOOT>

ダンクシュート編集部

2024.08.09

昨季のNBAファイナルでMVPに輝いたブラウンだが、代表メンバーには落選。不満の声を上げていた。(C)Getty Images

 パリ五輪男子バスケットボールは現地8月8日に準決勝が行なわれ、アメリカ代表がセルビアに95-91で逆転勝利を飾り、五輪5連覇へあと1勝とした。

 アメリカは今大会、グループリーグでセルビア、南スーダン、プエルトリコに3連勝。準々決勝でブラジルに122-87で勝利すると、準決勝のセルビア戦は終始劣勢の展開のなかでステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)が36得点、レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)が16得点、12リバウンド、10アシストのトリプルダブルでチームを牽引し、逆転勝利を飾った。10日の決勝では、地元フランスと対戦する。

 チームの一体感が目を引くアメリカだが、今大会のメンバー選考を巡ってはジェイレン・ブラウン(ボストン・セルティックス)が選考漏れに不快感を示し、一部で話題となっていた。そのなかで、アメリカ代表のマネージング・ディレクターを務めるグラント・ヒル(元デトロイト・ピストンズほか)は、2028年のロサンゼルス五輪における代表候補として考えることを示唆している。

 ブラウンはNBAで5年連続平均20点以上、昨季はセルティックスを16年ぶりのリーグ制覇に導くとともにファイナルMVPに輝いたにもかかわらず、五輪メンバーから落選。カワイ・レナード(ロサンゼルス・クリッパーズ)が離脱したの際の追加招集からも漏れたことに、本人がSNSで"アメリカ代表のスポンサーであるナイキと契約している選手が、優先的に代表入りしているのではないか"というニュアンスの陰謀論を唱えるなど、不満を露わにしていた。
 
 1996年のアトランタ五輪で金メダルを獲得し、現在はアメリカ代表のマネージング・ディレクターを務めるヒルは、『The Dan Patrick Show』で"陰謀論"という言葉を実際に使った上ではっきりと否定。「そういう話は好きだけど、陰謀論と考えるのはどうかと思う。純粋にバスケットボール面での判断」と説明したが、ブラウンはSNSで「グラント・ヒルが俺を陰謀論者と呼んだことにがっかりした。俺は21歳の頃から(NBA選手会の)副会長を務めていて、理解もあるのに」と強い不快感を示した。

 そういった背景があったなかで、ヒルは『SHOWTIME Basketball』の人気ポッドキャスト番組『All The Smoke』に出演した際、ブラウンが望むのであれば、2028年のロサンゼルス五輪の代表候補になるとの旨を口にした。

「大きな騒ぎになっているが、彼とはある時点でしっかりと話し合えば、理解を得られると信じている。私の目的は勝利だ。私が学んだことのひとつは、何事も個人的に捉えないということ。それが実現したら、切り替えて勝利を見据える必要がある」

 ヒルは今回のメンバー発表前に、ブラウンを含むリーグの実力者たちに直接電話をかけ、不選出の理由を伝えていたという。

「最初にロスターが発表される前、私は特定の選手たちに電話をした。ポール・ジョージ、デイミアン・リラード、ジェイレン・ブラウン…、彼らはしっかりした地位にいて、ニュースが公になる前に話を聞いておくべきだと思ったからだ。彼らの意欲を高く評価すると同時に、いかに(選考が)難しいことかも理解してほしかった。私にとってはそれが誠実さだった。正しいことをしなければいけないし、彼らがこれまでUSAバスケットボールにおいてどのような存在だったかも認識しないといけない」

 順当に勝ち上がるパリ五輪代表チームの裏で、思わぬ形で注目を集めてしまった選考騒動。しかしこれも、分厚い選手層を誇るアメリカゆえの悩みなのだろう。

構成●ダンクシュート編集部
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【動画】2024パリ五輪アメリカ代表メンバーと落選したブラウン