サンロッカーズ渋谷に楽しみな才能が台頭している。トロイ・マーフィージュニアは米カリフォルニア州出身の22歳。ドミニカン大学カリフォルニア校を中退し、2022−23シーズンに当時B2だった越谷アルファーズでプロキャリアをスタートさせた。富山グラウジーズを経て、今季からB1の強豪・渋谷に移籍している。
【動画】マーフィージュニアが活躍した三河戦 193センチ・93キロのウイングプレイヤーで、母のルーツと国籍が日本。スピード、跳躍力で彼と同レベルの日本人選手を探すことは至難だろう。アメリカ育ちだが、日本語の会話も特に問題はない。
渋谷はアンソニー・クレモンズ、ベンドラメ礼生、田中大貴と高いレベルのハンドラーを3枚擁している。この3名は経験値も高い「鉄板」のレギュラーで、マーフィージュニアにとってはかなり高い壁だった。
しかし1月11日のシーホース三河戦は、中地区のプレーオフ圏内を争うライバルに対して鮮烈なプレーを見せた。18分30秒の出場で9得点、1アシストを記録。3ポイントシュートを75%の高確率で決め、83-74と勝利する立役者の一人になった。
11日の試合後に、マーフィージュニアはこう語っている。
「僕の仕事はちゃんとオープンショットを打って決めて、激しいDFをすることだけど、そこは頑張ってできた。だけど成長したいとなったら、プレーメイクやパスを頑張らなければいけない」
マーフィージュニアも流れの中でハンドラーを任される場面は何度かあったが、ターンオーバーが「4」とやや多かった。この試合に限らず先輩ハンドラーのようなスキルや状況判断、インサイドとの連携を身につけることが現時点の課題だ。
とはいえそのアスリート性は抜群だ。「中学からバスケを始めたので、結構すぐダンクが出来た」というから、その天性たるや恐るべしである。5フィート11インチ(180センチ)の13歳がダンクを決める驚異は、バスケを多少なりとも知っている人ならすぐ分かるだろう。
そんな異能を見込まれ、マーフィージュニアはBリーグがオールスターゲームの前日、1月18日に開催するダンクコンテストにも選出されている。自らを「ダンクキッズ」と称する彼は抱負をこう口にする。
「ダンクコンテストに出られるのは本当に夢みたいなものなので、楽しみにしています。明日の試合が終わったら、オールスターまで全部ダンクの練習です」
確かにそのプレーはまだ荒削りだ。ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチも「21歳、22歳はヨーロッパならば若手の中に入らない」と甘えを許さないコメントをしていた。しかし「このチームは僕が今までやっていたバスケと違うから、最初はちょっと難しかった」というヨーロッパスタイルのバスケにも適応し、出場時間を勝ち取りつつある。
日本代表への意欲を尋ねると「もちろん狙っています」と食い気味に答えを返してくれた。その理由を彼はこう言葉にする。
「次のオリンピックはロサンゼルスなので、僕の地元だから、もう絶対に出なきゃいけない」
マーフィージュニアは2028年のロス五輪を25歳で迎える。その頃にどんな選手になっているのか、今から楽しみだ。
取材・文●大島和人(スポーツライター)
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