専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
NBA

2020年ドラフトでNBA入りが期待される19歳。イスラエルの至宝、デニ・アブディヤとはいったい何者か

小川由紀子

2020.01.07

昨年はNBAが主催する「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・グローバルキャンプ」に参加し、MVPに選出された。(C)REUTERS/AFLO

昨年はNBAが主催する「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・グローバルキャンプ」に参加し、MVPに選出された。(C)REUTERS/AFLO

 それでも、その後の1年間で15cmも身長が伸びると、シニアチームに招集。16歳でプロ契約を結ぶなど順風満帆のキャリアを送っていたが、人生を賭け、報酬という対価を得てプロとしてプレーすることは、これまでのジュニアチームとは別世界だった。バスケットボールが好きで上手いというだけではやっていけない、「プロ選手」の世界に馴染むのに最初は苦しんだという。

 先輩選手たちの中には、あえて厳しく接する者もいたが、その厳しさに立ち向かうことでアブディヤは加速的に成長していった。クラブでのトレーニングのほかに、セルビア人のパーソナルコーチをつけ、技術面だけでなく、いかにゲームにインパクトを与えられるかといったプレー上の「コツ」、さらにはメンタル面など、本人いわく「24時間体制」でバスケットボールと向き合った。

 彼の存在を一躍世界中に知らしめたのは、2018年にドイツで行なわれたU20欧州選手権。当時17歳ながら年長者をさしおいて主力として出場すると、平均12.7点、6.4リバウンドという成績でチームの優勝に貢献し、大会ベストチームに選出された。

 翌19年も同じくU20欧州選手権に出場し、平均18.4点、8.3リバウンド、5.3アシストと大暴れ。イスラエルを初の大会連覇に導き、自身は大会MVPに輝いた。特に準決勝のフランス戦で26得点、11リバウンド、5スティール、スペインとの決勝では23得点、5リバウンド、7アシストと八面六臂の働きを披露。今後はフル代表でもチームの中心として黄金時代を築いていくことが期待されている。
 
 所属するマッカビも好調で、欧州最高峰の舞台ユーロリーグでは現在17試合を終えて11勝6敗の4位につけている。アブディヤは15試合に出場し、平均12.4分のプレータイムで2.8点、2.5リバウンド、 1.2アシストと目立った数字を残しているわけではないが、チームのイオニス・スフェロプロスHCは「マッカビのように上位を狙うようなクラブで、ティーンエイジャーがユーロリーグの試合に出ること自体、普通ではない」と、いかに彼が傑出した存在かを力説している。

 サイズやプレースタイルなど共通点が多いことから、ヨーロッパではNBAで旋風を巻き起こしているルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)と比較する声も多い。ただ、「彼はもっと若くしていろいろなことを達成した。19歳でユーロリーグのMVPにもなった、20年に1人の逸材だ。自分は彼よりも歩みのスピードは遅い。それぞれ自分のペースがある」と本人はあくまで自分の道を歩むことを強調している。

 ほかにもNBAで一時代を築いたマヌ・ジノビリ(元サンアントニオ・スパーズ/アルゼンチン出身)やダニーロ・ガリナーリ(オクラホマシティ・サンダー/イタリア出身)に近いという声もあるが、そうしたトッププレーヤーと比較されるのも注目度の高さゆえ。有名選手を父にもつサラブレッドでありながら、ハードワークを欠かさず、『明日は今日よりも一歩でもうまくなること』を目標に掲げる謙虚さこそが彼の最大の強みだ。イスラエルが生んだ稀代のバスケットボーラーの歩む道は、バスケ大国アメリカへと続いている。

文●小川由紀子

【PHOTO】美女揃い!妖艶ダンスで人々を魅了するNBAのチアリーダー特集!
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号