海外サッカー

「右SBとして生まれたわけじゃない」マドリーのバルベルデが見せた素顔と、戦術の変化に翻弄される27歳のリアル

下村正幸

2025.10.09

バルベルデの最適解はどこなのか。(C)Getty Images

 アトレティコ・マドリーとのダービーで2-5と大敗したわずか3日後、レアル・マドリーはチャンピオンズリーグでカイラト・アルマトイに5-0で快勝し、ひと息ついた。しかし、その直後に新たな騒動が浮上する。フェデリコ・バルベルデが「右サイドバックでの出場を拒否した」と報じられたのだ。

 前日の記者会見でバルベルデは、「右SBとして生まれたわけでも育ったわけでもない。あのポジションで出場したのは緊急事態のときだけ」と語っていた。ダニエル・カルバハルとトレント・アレクサンダー=アーノルドが負傷中で、右SBで起用される可能性が高まっていたタイミングだけに、その発言が波紋を広げた。

 一部ファンの批判に対し、バルベルデはSNSで「プレーを拒否した事実はない。このクラブのために常に全力で戦ってきた」と強調。ある時は、負傷を抱えながら出場してきた過去を挙げ、報道を強く否定した。
 
 しかし、スペインのラジオ局『Cadena SER』の司会者ヘスス・ガジェゴ氏は、「問題はポジションではなく、チーム内での居場所の喪失にある」と分析する。カルロ・アンチェロッティ監督時代、広いエリアを駆け回り攻守に貢献したバルベルデは、シャビ・アロンソのもとで導入されたコンパクトな戦術の中で存在感を失いつつあるという。実況アナウンサーのアントニオ・ロメロ氏も「中盤で自由を失い、フィジカルを生かすスペースがなくなっている」と指摘する。

 一方、右SBとしての適性を評価する声も少なくない。ジャーナリストのアドリアン・ブランコ氏は「彼はすでに世界屈指の右SBになり得る資質を示している。それは不名誉な役割ではない」と擁護する。実際、ビジャレアル戦で右SBとしてフル出場した際には、持ち前の推進力でチームの勝利(3-1)に貢献した。

 戦術アナリストのアルベル・ブラジャ氏は「多才ゆえに"便利屋"として扱われてきたが、逆に彼自身の輪郭が見えにくくなっている」と語る。ジュード・ベリンガムの復帰で中盤再編が進むなか、バルベルデがどのポジションで輝きを取り戻すのか。新生マドリーの鍵を握る一人として、その答が注目されている。

文●下村正幸

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