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海外サッカー

“弱小のように守った”マドリーと、「何だって成し遂げられる」バルサ――明暗を分けた両指揮官の哲学

下村正幸

2026.01.14

取って取られての展開で、最後まで攻撃の手を緩めなかったバルサがスーペルコパを制した。(C)Getty Images

取って取られての展開で、最後まで攻撃の手を緩めなかったバルサがスーペルコパを制した。(C)Getty Images

 バルセロナとレアル・マドリーによるクラシコ決戦となったスーペルコパ・デ・エスパーニャ決勝は、単なるタイトル争い以上の意味を孕んでいた。下馬評は、バルサ優勢に大きく傾いていた。アトレティコOBのキコ・ナルバエス氏が「今のマドリーはバルサにとってのカモだ」とまで言い放ったように、戦う前から勢いの差は明白だった。しかし、サウジアラビアで繰り広げられたのは、文字通りの意地と意地のぶつかり合いだった。

「張り詰めた緊張感に、超絶技巧の数々。この激闘には、フットボールを偉大なものにするあらゆる要素が凝縮されていた」 スペイン紙『EL PAIS』がそう振り返る熱戦の末に、バルサが3-2で勝利を収め、シーズン後半戦に向けて大きな弾みをつけた。この激闘のカギを握ったのは、結果次第ではこの一戦がマドリーで最後の指揮となるシャビ・アロンソ監督の、「背水のゲームプラン」だった。

 シャビ・アロンソは、5バックによる超守備的布陣を敷いた。攻撃面は実質的にヴィニシウスの個の力にすべてを託す堅守速攻だ。その姿を、バルサの生き字引的存在のジョゼップ・マリア・ミンゲージャ氏は痛烈に批判する。「100試合以上のクラシコを見てきたが、格上を恐れる弱小クラブのように守備に汲々とするマドリーの姿は初めてだ。かつてのジョゼ・モウリーニョの手法を彷彿とさせる、中盤から前へ攻め上がることをほぼ放棄したスタイルだ。世界が期待した姿とは、あまりにかけ離れていた」

 

 その一方で『EL PAIS』のラモン・ベサ記者は、その硬直した戦いの中にマドリー特有の美学を見出す。「マドリーの選手たちは、切迫感を『咀嚼』する方法を知っている。その姿に流動性も継続性もなかったが、悲壮なまでの闘争心があった。彼らは理解しているのだ。生き残るために必要なのは『理想のプレー』ではなく『勝利』であることを」。

 対するバルサは、粘るマドリーを3度突き放して逃げ切った。スペイン紙『AS』のフアン・ヒメネス記者は、そのタフなメンタリティを賞賛する。「数年前はわずかな衝撃で崩れ去っていたバルサが、今や確固たるパーソナリティを宿している。前半終了間際に二度の同点劇を許すという、普通なら心が折れてしまうような打撃を受けても、彼らは決して怯まなかった。フリック監督は、『自分たちは何だって成し遂げられる』と選手たちを心底納得させている。決勝はプレーするものではなく、勝つものだ。そのフリック流の勝者のメンタリティこそが、バルサをチャンピオンに導いた原動力だ」

  著名なジャーナリスト、リカルド・トルケマダ氏は、フリック監督の手腕がもたらしたフットボールに対する真摯さに着目し、若いチームの未来に期待を寄せる。「今のバルサは日によってパフォーマンスの良し悪しや精度に波があり、時に守備の権威を欠き、背後を突かれることもある。しかし、彼らは決して観る者を欺かない。その信念は微塵も揺らぐことはない。チームの大半を占めるのは、完成された『現在』よりも底知れぬ『未来』を宿した若者たちだ。その旅の途上で勝ち続けているという事実は決して簡単なことではない。すべてはフリックの手腕の賜物だ」。

文●下村正幸

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