その悲報に接した瞬間、バルセロナのハンジ・フリック監督は激怒したという。3月末に実施された国際親善試合でのブラジル対フランス戦におけるブラジル代表ラフィーニャの負傷だ。
スペイン紙『EL PAIS』によると、ブラジル人アタッカーは右足大腿二頭筋の損傷と診断。全治5週間と報じられている。もともと爆発的なスプリントを繰り返すプレースタイルは負傷のリスクと隣り合わせで、今シーズンすでに筋肉系の怪我を3度負っていた。フリック監督も終盤戦を見据えて起用には慎重を期していたが、いわゆる「FIFAウイルス」の犠牲となった格好だ。
過密日程が最大の論点となるのは当然だが、親善試合で起こった今回のアクシデントに対し、批判の矛先は選手本人の自己管理にも向いている。
スペインのラジオ局『Onda Cero』のアナウンサー、アルフレッド・マルティネス氏は、「ラフィーニャは対応を誤った。リスクは明白であり、本人も承知していたはずだ。例えば、チームに帯同してグループの一員として振る舞いながらも、実戦での無理を避ける。あるいは事前にブラジル代表のカルロ・アンチェロッティ監督と対話し、シーズン終盤の特殊な状況と負傷リスクを説明しておくべきだった。バルサの選手として、この3月シリーズの2試合を回避する正当な理由はあった」と厳しく追及する。
もっともこの批判は、ファンの悲鳴でもある。今シーズン喫した7敗のうち、5敗がラフィーニャ不在時に集中している事実がそれを物語る。フリック監督は当面、このキーマン抜きで戦わなければならない。代役の筆頭はマーカス・ラッシュフォードであり、ブレイク明け直後のラ・リーガ30節アトレティコ・マドリー戦(2-1)では先発出場。同点弾を決め勝利に貢献した。
しかし、バルサOBのビクトル・ムニョス氏は「個の打開力やシュート技術は卓越しているが、ハイプレスの強度やプレーの連続性に難がある。ラフィーニャとは特性が著しく異なる」と指摘する。内側に絞った連動や連係、そして献身性という側面においては、ラフィーニャのような働きを期待するのは無理がある。
チーム全体に範囲を広げても、ラフィーニャの代わりが務まる選手は見当たらない。そこで浮上するのが、左サイドにダニ・オルモやフェルミンを配してMFを4枚にするシステムだ。バルサ界隈の著名なフリージャーナリスト、シャビ・トーレス氏は「バルサ伝統のポジショナルなボール保持によって、試合のコントロールをより保証し、秩序ある攻撃を可能にする。その結果、ラフィーニャがいる時の特徴であるプレスの強度も維持できるはずだ。それはまた得点力を保ちつつ、失点を減らすという攻守のバランスをチームにもたらすだろう」とそのメリットを解説する。
ただし今シーズン、この布陣をスタートから採用した例は少なく、現状はオプションの域を出ない。他にフェラン・トーレスやルーニー・バルドグジを起用する案も挙がっている。しかし前者はもはやゴールに近い位置でこそ輝く選手であり、後者の主戦場は右ウイングだ。本職でない以上、大きな成果を期待するのは酷だろう。
前述のアトレティコ戦でフリック監督は、ダニ・オルモを「ファルソ・ヌエベ(偽9番)」に据える奇策を用いた。かつての名手イバン・ラキティッチ氏が「ラフィーニャがいるバルサと、いないバルサでは別物だ」と断言するように、その影響力は戦術面のみならず精神面にも及ぶ。
単なる「代役探し」という発想を超え、チーム全体でその巨大な穴を埋める姿勢が、今まさに求められている。
文●下村正幸
【動画】W杯優勝候補対決! ブラジル対フランス戦のハイライト
スペイン紙『EL PAIS』によると、ブラジル人アタッカーは右足大腿二頭筋の損傷と診断。全治5週間と報じられている。もともと爆発的なスプリントを繰り返すプレースタイルは負傷のリスクと隣り合わせで、今シーズンすでに筋肉系の怪我を3度負っていた。フリック監督も終盤戦を見据えて起用には慎重を期していたが、いわゆる「FIFAウイルス」の犠牲となった格好だ。
過密日程が最大の論点となるのは当然だが、親善試合で起こった今回のアクシデントに対し、批判の矛先は選手本人の自己管理にも向いている。
スペインのラジオ局『Onda Cero』のアナウンサー、アルフレッド・マルティネス氏は、「ラフィーニャは対応を誤った。リスクは明白であり、本人も承知していたはずだ。例えば、チームに帯同してグループの一員として振る舞いながらも、実戦での無理を避ける。あるいは事前にブラジル代表のカルロ・アンチェロッティ監督と対話し、シーズン終盤の特殊な状況と負傷リスクを説明しておくべきだった。バルサの選手として、この3月シリーズの2試合を回避する正当な理由はあった」と厳しく追及する。
もっともこの批判は、ファンの悲鳴でもある。今シーズン喫した7敗のうち、5敗がラフィーニャ不在時に集中している事実がそれを物語る。フリック監督は当面、このキーマン抜きで戦わなければならない。代役の筆頭はマーカス・ラッシュフォードであり、ブレイク明け直後のラ・リーガ30節アトレティコ・マドリー戦(2-1)では先発出場。同点弾を決め勝利に貢献した。
しかし、バルサOBのビクトル・ムニョス氏は「個の打開力やシュート技術は卓越しているが、ハイプレスの強度やプレーの連続性に難がある。ラフィーニャとは特性が著しく異なる」と指摘する。内側に絞った連動や連係、そして献身性という側面においては、ラフィーニャのような働きを期待するのは無理がある。
チーム全体に範囲を広げても、ラフィーニャの代わりが務まる選手は見当たらない。そこで浮上するのが、左サイドにダニ・オルモやフェルミンを配してMFを4枚にするシステムだ。バルサ界隈の著名なフリージャーナリスト、シャビ・トーレス氏は「バルサ伝統のポジショナルなボール保持によって、試合のコントロールをより保証し、秩序ある攻撃を可能にする。その結果、ラフィーニャがいる時の特徴であるプレスの強度も維持できるはずだ。それはまた得点力を保ちつつ、失点を減らすという攻守のバランスをチームにもたらすだろう」とそのメリットを解説する。
ただし今シーズン、この布陣をスタートから採用した例は少なく、現状はオプションの域を出ない。他にフェラン・トーレスやルーニー・バルドグジを起用する案も挙がっている。しかし前者はもはやゴールに近い位置でこそ輝く選手であり、後者の主戦場は右ウイングだ。本職でない以上、大きな成果を期待するのは酷だろう。
前述のアトレティコ戦でフリック監督は、ダニ・オルモを「ファルソ・ヌエベ(偽9番)」に据える奇策を用いた。かつての名手イバン・ラキティッチ氏が「ラフィーニャがいるバルサと、いないバルサでは別物だ」と断言するように、その影響力は戦術面のみならず精神面にも及ぶ。
単なる「代役探し」という発想を超え、チーム全体でその巨大な穴を埋める姿勢が、今まさに求められている。
文●下村正幸
【動画】W杯優勝候補対決! ブラジル対フランス戦のハイライト




