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海外サッカー

「猛烈な負荷」クロップ、ジダン、アンチェロッティ…名将がクラブから代表監督にシフトする理由「過酷で気まぐれな世界」海外メディア検証

THE DIGEST編集部

2026.10.06

左から、ドイツ代表のクロップ監督、フランス代表のジダン監督、ブラジル代表のアンチェロッティ監督。(C)Getty Images

左から、ドイツ代表のクロップ監督、フランス代表のジダン監督、ブラジル代表のアンチェロッティ監督。(C)Getty Images

 北中米ワールドカップ後、代表チームの監督人事が大きな注目を集めた。リバプールを率いてチャンピオンズリーグ(CL)など数々のタイトルを獲得したユルゲン・クロップがドイツ代表の監督に就任。レアル・マドリーをCL3連覇に導いたジネディーヌ・ジダンが、長年噂されていたフランス代表指揮官の座に就いた。

 クラブレベルで輝かしい実績を築いた名将が代表チームへと活躍の場を移す流れは、カルロ・アンチェロッティがブラジル代表、トーマス・トゥヘルがイングランド代表、マウリシオ・ポチェティーノがアメリカ代表を率いるなど、近年になってより鮮明になっておいると言える。

「かつて、トップレベルの指導者にとって、代表監督は必ずしも魅力的な仕事ではなかった」と報じたのが、スポーツ専門チャンネル『ESPN』だ。「マウリツィオ・サッリ(アタランタ監督)は、『代表チームには学ぶものがない。30日間でチームを十分に整えることは不可能だ』とまで語っていた」と、時代の変化に注目している。

 同メディアは、「かつてはクラブサッカーこそが指導者の頂点だった。クラブなら国籍に縛られずに選手を獲得でき、監督は毎日のように選手を指導できる。さらに潤沢な放映権収入によって、最高の選手たちを最高の監督が指導する環境が出来上がっていた。自ら選手を選び、日々のトレーニングで戦術を細部まで作り込むことを望むトップ監督にとって、クラブは理想的な職場だった」と指摘。それではなぜ、「名将たちが代表監督を選ぶ」時代になってきているのか。

 記事では、「トップレベルの監督に相応しいクラブの『椅子』の少なさ」を、流れが変化した理由として挙げており、「年俸1000万ドル(約15億円)以上を支払い、同時にCLのタイトルを狙えるクラブとなれば、その数は限られる。欧州を見渡しても該当するクラブは『10』程度であり、過去に指揮したクラブや宿敵関係などを考慮すれば、実際の選択肢はさらに少なくなる」と分析。さらに、「1年間に空くトップクラブ監督のポストは3~5程度だ」と付け加えた。

 また現代のクラブでは、「監督の権限そのものが縮小している」という。従来の「マネジャー」から「ヘッドコーチ」へ肩書きを変えるクラブが増えたのは、「補強や長期的なチーム編成は監督ではなく、スポーツディレクターらが担うようになった」から。こうした構図を同メディアは、「クラブは自分たちのシステムに適合する監督を求める一方、有名監督は高額な報酬を必要とし、システムそのものを自分流にしたがる」と表現している。

 
 一方で、「その点、代表監督であれば、クロップ、ジダン、アンチェロッティらは国を代表する『顔』となり、招集する選手を自ら決定し、チームの戦い方について大きな権限を握れる。プレミアリーグの監督平均在任期間が18か月未満とされる一方、代表ではクラブほど常に解任の危機に晒されるわけでもない。報酬面でも各国協会はトップ監督に競争力のある条件を提示できる」というメリットを挙げた。

 ただし、言うまでもなく「名クラブ監督=名代表監督とは限らない」とも同メディアは指摘する。ルイス・エンリケ(パリ・サンジェルマン監督)とハンジ・フリック(バルセロナ監督)が2022年カタールW杯で、前者がスペイン代表でベスト16止まり、後者はドイツ代表でグループステージ敗退という散々な結果に終わったことなどを例に挙げ、逆に成功例としてディディエ・デシャン(前フランス代表監督)、マルチェロ・リッピ(元イタリア代表監督)らの名前を挙げた。

 同メディアは結論として、「代表監督には、選手の視察、所属クラブとの関係構築、中長期的なチーム編成なども求められる。つまり、欧州最高峰のクラブで成功するための能力が、そのまま代表チームを強くする能力になるとは限らない」と記載。クラブの監督と代表監督とでは、まったく別の能力が求められるということだ。実際、直近2大会のW杯優勝監督(アルゼンチンのリオネル・スカローニ、スペインの・ルイス・デ・ラ・フエンテ)が、ともにCLで1試合も指揮を執った経験がないことを挙げ、「それは偶然ではないのかもしれない」と締め括っている。

 ちなみに、こうした名将の「代表シフト」には、別の背景もあるかもしれない。英紙『The Guardian』は先月、「プレミアリーグでは、50歳以上の監督が過去20年間で最少となり、40代を中心とした若い指揮官への世代交代が進んでいる」と報じていた。その理由のひとつとして挙げたのが、「現代のクラブ監督という仕事の猛烈な負荷」である。

 トレーニングから分析、スタッフの統率、フロントとの調整まで、仕事は細分化・高度化し、わずか1か月の不振でも解任されかねないなど、プレッシャーはまさに巨大。ミスが許される余地は極めて小さい状況下での仕事について、同紙は「プレミアリーグは指導者にとって最高の舞台かもしれないし、最高の報酬が支払われる場所かもしれない。しかし、そこは過酷で気まぐれな世界であり、並れた肉体的、精神的エネルギーを必要とする。つまり、“老人”が入り込む余地はないのだ」と言い切っている。

構成●THE DIGEST編集部
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