マンチェスター・シティの監督としてプレミアリーグに革新をもたらしたのがジョゼップ・グアルディオラなら、その原動力となったのがGKエデルソンだった。
米スポーツメディア『The Athletic』は、「エデルソンはショートパスで相手のプレスをかいくぐるだけに留まらなかった。静止した状態から強烈なグラウンダーのパスを刺し込めるため、相手は前がかりに奪いに行くリスクを冒せない。深追いすれば背後にスペースを晒し、格好の餌食になる」と分析したうえで、その果たした役割を次のように指摘している。「エデルソンが見せた精緻なパス配給は、リーグ全体でGKのロングパスを激減させた。しかし各チームがプレスの強度と連動性を高めるなか、その頭越しに蹴る長いボールは再び増加傾向にある」。
プレミアリーグに大きな足跡を残したエデルソンは、現在トルコのフェネルバフチェでプレーしている。同メディアは「エデルソンほどGKの役割に大きな影響を与える存在は、当面現われそうにない」とその希少性を認めつつも、後継者の存在に言及。「力強いキックは、戦術トレンドの新たな転換点の最前線にある」と評したのが、今シーズンからアストン・ビラでゴールマウスを守る鈴木彩艶だ。
その理由について、次のように解説している。
「スズキに関して早くも明白となったのは、配球の正確さとそのバリエーションの豊かさだ。プレッシャーを受けながらも平然とショートパスをつなぎ、左右どちらの足からでもロングボールを蹴り分ける。プレスへの独自の対処と、強烈なキックでボールを一気に敵陣へ飛ばす姿には、エデルソンが去った後の時代をどう切り拓いていくか、すでに確かな片鱗が示されている」
相手のプレスを引きつけ、そこから鋭い縦パスを打ち込むスタイルを好むウナイ・エメリ監督の戦術に、鈴木の特長は合致している。パルマ時代もロングキックは大きな武器だったが、エメリもまたその能力を自らの戦術構築の土台に据えている。
違いは、チーム全体の戦術的成熟度にある。『The Athletic』が「昨シーズンのパルマは、相手からのプレッシャーを少しでも受ければ、基本的にはロングボールによるダイレクトな攻撃を選択していた。
その結果、スズキのロングパス試行数はセリエA全体で13位を記録し、全体のパス成功率が62%にとどまる一因となった。対照的に、より多彩なパスの選択肢を享受していたGKエミリアーノ・マルティネスの成功率は73.7%に達していた」と記す通り、パルマでの数字はロングボール主体の現実路線によるものだった。現在はエメリ仕込みの誘い出すビルドアップに加え、前線でボールを収められるFWニコラス・ジャクソンやMFジョン・マギンの存在が、鈴木のキックの威力をより引き出している。
前任のマルティネスとの比較について、英放送局『Sky Sports』は「スズキはマルティネスほど相手のハイプレスを引きつけず、両サイドに蹴り分けるパスも同等の精度にはない。もっとも、左右どちらの足からでも繰り出せる正確なロングボールによって、アストン・ビラの戦い方にさらなるバリエーションをもたらしていることは間違いない」と評価する。
新たな挑戦には痛手も伴う。11月3日のチャンピオンズリーグ、バルセロナ戦では終始相手の圧力を受け、先制点も自陣深くでショートパスをつなごうとしたところを奪われて献上した。最終的に3失点を喫し、『The Athletic』のアストン・ビラ番記者ジェイコブ・タンズウェル氏は「チーム戦術に基づいていたとはいえ、スズキが冒したリスクはあまりに大きすぎた」と苦言を呈した。
鈴木にとっては、プレミアリーグ前節フルアム戦でのキャッチミスによるオウンゴールに続くに続く試練となった。それでも、「最高のパフォーマンスを発揮するため、日々全力で取り組む姿を見るのは本当に素晴らしい」とエメリ監督が称える通り、その向上心に疑いの余地はない。
プレースタイルではエデルソン、クラブではマルティネスという偉大な先達の背中を追いながら、鈴木はGKの本分であるセービングと規格外のキックで、新時代のGK像をプレミアのピッチに刻み込もうとしている。
文●下村正幸
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米スポーツメディア『The Athletic』は、「エデルソンはショートパスで相手のプレスをかいくぐるだけに留まらなかった。静止した状態から強烈なグラウンダーのパスを刺し込めるため、相手は前がかりに奪いに行くリスクを冒せない。深追いすれば背後にスペースを晒し、格好の餌食になる」と分析したうえで、その果たした役割を次のように指摘している。「エデルソンが見せた精緻なパス配給は、リーグ全体でGKのロングパスを激減させた。しかし各チームがプレスの強度と連動性を高めるなか、その頭越しに蹴る長いボールは再び増加傾向にある」。
プレミアリーグに大きな足跡を残したエデルソンは、現在トルコのフェネルバフチェでプレーしている。同メディアは「エデルソンほどGKの役割に大きな影響を与える存在は、当面現われそうにない」とその希少性を認めつつも、後継者の存在に言及。「力強いキックは、戦術トレンドの新たな転換点の最前線にある」と評したのが、今シーズンからアストン・ビラでゴールマウスを守る鈴木彩艶だ。
その理由について、次のように解説している。
「スズキに関して早くも明白となったのは、配球の正確さとそのバリエーションの豊かさだ。プレッシャーを受けながらも平然とショートパスをつなぎ、左右どちらの足からでもロングボールを蹴り分ける。プレスへの独自の対処と、強烈なキックでボールを一気に敵陣へ飛ばす姿には、エデルソンが去った後の時代をどう切り拓いていくか、すでに確かな片鱗が示されている」
相手のプレスを引きつけ、そこから鋭い縦パスを打ち込むスタイルを好むウナイ・エメリ監督の戦術に、鈴木の特長は合致している。パルマ時代もロングキックは大きな武器だったが、エメリもまたその能力を自らの戦術構築の土台に据えている。
違いは、チーム全体の戦術的成熟度にある。『The Athletic』が「昨シーズンのパルマは、相手からのプレッシャーを少しでも受ければ、基本的にはロングボールによるダイレクトな攻撃を選択していた。
その結果、スズキのロングパス試行数はセリエA全体で13位を記録し、全体のパス成功率が62%にとどまる一因となった。対照的に、より多彩なパスの選択肢を享受していたGKエミリアーノ・マルティネスの成功率は73.7%に達していた」と記す通り、パルマでの数字はロングボール主体の現実路線によるものだった。現在はエメリ仕込みの誘い出すビルドアップに加え、前線でボールを収められるFWニコラス・ジャクソンやMFジョン・マギンの存在が、鈴木のキックの威力をより引き出している。
前任のマルティネスとの比較について、英放送局『Sky Sports』は「スズキはマルティネスほど相手のハイプレスを引きつけず、両サイドに蹴り分けるパスも同等の精度にはない。もっとも、左右どちらの足からでも繰り出せる正確なロングボールによって、アストン・ビラの戦い方にさらなるバリエーションをもたらしていることは間違いない」と評価する。
新たな挑戦には痛手も伴う。11月3日のチャンピオンズリーグ、バルセロナ戦では終始相手の圧力を受け、先制点も自陣深くでショートパスをつなごうとしたところを奪われて献上した。最終的に3失点を喫し、『The Athletic』のアストン・ビラ番記者ジェイコブ・タンズウェル氏は「チーム戦術に基づいていたとはいえ、スズキが冒したリスクはあまりに大きすぎた」と苦言を呈した。
鈴木にとっては、プレミアリーグ前節フルアム戦でのキャッチミスによるオウンゴールに続くに続く試練となった。それでも、「最高のパフォーマンスを発揮するため、日々全力で取り組む姿を見るのは本当に素晴らしい」とエメリ監督が称える通り、その向上心に疑いの余地はない。
プレースタイルではエデルソン、クラブではマルティネスという偉大な先達の背中を追いながら、鈴木はGKの本分であるセービングと規格外のキックで、新時代のGK像をプレミアのピッチに刻み込もうとしている。
文●下村正幸
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