暫定メンバーの29人発表時は「至って順当」と評価されたスペイン代表のEUROに向けた選手選考だが、最終26人を発表する段階でサプライズが起きた。
落選した3選手の中に、当確だと思われていたバルセロナの17歳、パウ・クバルシの名前が含まれていたのだ(他2名はマルコス・ジョレンテとアレイシ・ガルシア)。当初からCBがひとり外れるとは見られていたが、下馬評では24歳のダニエル・ビビアン(アスレティック・ビルバオ)の離脱が有力視されていた。またレアル・マドリーのナチョも、一部では長く代表から遠ざかっていたことを理由に、落選もあり得ると言われていた。
もちろんビビアンもナチョも、代表に相応しい実力の持ち主だ。前者は終盤までラ・リーガでCLの出場権争いに顔を出し(最終順位は5位)、40年ぶりにコパ・デル・レイを制したアスレティックの躍進の立役者のひとりで、ハイライン・ハイプレスを貫くアスレティックの守備を支えた。後者もCBに故障者が続出したマドリーの最終ラインを支え、キャプテンとして、ラ・リーガとCLの2冠に大きく貢献している。
一方、クバルシの強みは、フィード力。しかもサイドに展開すると見せかけて鋭い縦パスを通し、得点機を演出するなどといった芸当をさらりとやってのける。守備面でも、CLでヴィクター・オシメーンやキリアン・エムバペといった一流のFW相手に堂々と渡り合い、10代らしからぬ胆力を見せていた。そのゲームメイク能力は他のCB陣にはないもので、EURO本大会ではスペースを消されて攻めあぐむ場面などで重宝されると見られていた。
やはりというべきかバルセロナ寄りのメディアは、このクバルシ落選のニュースに嚙みついた。
『スポルト』紙のミゲル・サンス記者は、「マドリーの番記者たちは、3月にクバルシが代表デビューを果たしてからというもの、この若者のミスを執拗に批判した。クバルシの台頭によってナチョが割りを食うと考えた彼らは、クバルシの株を下げ、ナチョのメンバー入りを推挙するキャンペーンを張った。その勢いは凄まじいものがあり、バルサのCL敗退が決まった際には、『クバルシの若さが仇となった』と大々的に報じ、バルサの至宝のEURO出場を、千通りの論拠で阻止することに成功した」と憤慨している。
同記者の言っていることは決して言いがかりというわけではなく、実際、今年3月のスペイン代表デビューを境に、やたらとクバルシのミスを指摘する声が増えていた。そしてそのキャンペーンは成功し、UEFAネーションズリーグ決勝ラウンド以来、約1年間代表から遠ざかっていたナチョが逆転で最終メンバー入りを果たしたことで、バルサ寄りのメディアの不満が爆発した格好だ。
『ムンド・デポルティボ』紙でアスレティックの番記者を務めるカルロス・サバジャ氏は、「クバルシが将来を嘱望されている選手であるのは間違いないが、トップリーグでのプレー経験が乏しい。デ・ラ・フエンテ監督は、アスレティックで4年過ごしたビビアンの経験を取った格好だ。バルサのチームメイトでもあるラミネ・ヤマル(16歳)のように、攻撃で違いを生み出す選手でない限り、EUROのような短期決戦では、厳しい状況に追い込まれた場合に備えて経験に頼るほうがいい」と、経験という言葉を繰り返してビビアン選出の理由を考察する。
立場が変われば、見方も変わる。そして監督は、意にそぐわない決断を下すと、「圧力に屈した」などと言われる羽目になる。複雑な民族構成を持つスペインの代表チームを指揮するうえで、決して無碍にはできないテーマだ。
文●下村正幸
【動画】今年3月のスペイン対ブラジルは点の取り合いに!
落選した3選手の中に、当確だと思われていたバルセロナの17歳、パウ・クバルシの名前が含まれていたのだ(他2名はマルコス・ジョレンテとアレイシ・ガルシア)。当初からCBがひとり外れるとは見られていたが、下馬評では24歳のダニエル・ビビアン(アスレティック・ビルバオ)の離脱が有力視されていた。またレアル・マドリーのナチョも、一部では長く代表から遠ざかっていたことを理由に、落選もあり得ると言われていた。
もちろんビビアンもナチョも、代表に相応しい実力の持ち主だ。前者は終盤までラ・リーガでCLの出場権争いに顔を出し(最終順位は5位)、40年ぶりにコパ・デル・レイを制したアスレティックの躍進の立役者のひとりで、ハイライン・ハイプレスを貫くアスレティックの守備を支えた。後者もCBに故障者が続出したマドリーの最終ラインを支え、キャプテンとして、ラ・リーガとCLの2冠に大きく貢献している。
一方、クバルシの強みは、フィード力。しかもサイドに展開すると見せかけて鋭い縦パスを通し、得点機を演出するなどといった芸当をさらりとやってのける。守備面でも、CLでヴィクター・オシメーンやキリアン・エムバペといった一流のFW相手に堂々と渡り合い、10代らしからぬ胆力を見せていた。そのゲームメイク能力は他のCB陣にはないもので、EURO本大会ではスペースを消されて攻めあぐむ場面などで重宝されると見られていた。
やはりというべきかバルセロナ寄りのメディアは、このクバルシ落選のニュースに嚙みついた。
『スポルト』紙のミゲル・サンス記者は、「マドリーの番記者たちは、3月にクバルシが代表デビューを果たしてからというもの、この若者のミスを執拗に批判した。クバルシの台頭によってナチョが割りを食うと考えた彼らは、クバルシの株を下げ、ナチョのメンバー入りを推挙するキャンペーンを張った。その勢いは凄まじいものがあり、バルサのCL敗退が決まった際には、『クバルシの若さが仇となった』と大々的に報じ、バルサの至宝のEURO出場を、千通りの論拠で阻止することに成功した」と憤慨している。
同記者の言っていることは決して言いがかりというわけではなく、実際、今年3月のスペイン代表デビューを境に、やたらとクバルシのミスを指摘する声が増えていた。そしてそのキャンペーンは成功し、UEFAネーションズリーグ決勝ラウンド以来、約1年間代表から遠ざかっていたナチョが逆転で最終メンバー入りを果たしたことで、バルサ寄りのメディアの不満が爆発した格好だ。
『ムンド・デポルティボ』紙でアスレティックの番記者を務めるカルロス・サバジャ氏は、「クバルシが将来を嘱望されている選手であるのは間違いないが、トップリーグでのプレー経験が乏しい。デ・ラ・フエンテ監督は、アスレティックで4年過ごしたビビアンの経験を取った格好だ。バルサのチームメイトでもあるラミネ・ヤマル(16歳)のように、攻撃で違いを生み出す選手でない限り、EUROのような短期決戦では、厳しい状況に追い込まれた場合に備えて経験に頼るほうがいい」と、経験という言葉を繰り返してビビアン選出の理由を考察する。
立場が変われば、見方も変わる。そして監督は、意にそぐわない決断を下すと、「圧力に屈した」などと言われる羽目になる。複雑な民族構成を持つスペインの代表チームを指揮するうえで、決して無碍にはできないテーマだ。
文●下村正幸
【動画】今年3月のスペイン対ブラジルは点の取り合いに!
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