スペインでは、怪我などのアクシデントもないのに、前半途中で選手を交代することは、その対象者を"見せしめにする行為"と言われている。それをEUROという大舞台で、メジャー大会初出場の25歳の新鋭に行なったのがオランダ代表のロナルド・クーマン監督だ。その仕打ちを受けたジョーイ・フェールマンはその直後、涙を流した。にもかかわらずクーマンは試合後、痛烈なダメ出しで追い打ちをかけた。
EURO2024のグループステージ第3節、オランダ対オーストリア戦の35分に起きたこの出来事に噛みついたのが、スペイン紙『AS』の看板記者、アリツ・ガビロンド氏だ。
「クーマンは自分自身のキャラクターに飲み込まれてしまったようだ。あるいはこれこそが、彼が年齢を重ねる中で自ら探し求めた場所であり、たどり着いた結果なのか。それとも、ただ自分が作った説教壇から他人を見下したいだけなのか」と、「クーマン、問題の中の問題」と銘打たれたコラムは、冒頭から容赦がない。
ガビロンド記者が指摘するのは、クーマンがいまだにバルセロナをクラブ史上初の欧州王者に導く決勝FK弾を叩き込んだ現役時代(1991-1992シーズン)の威光に頼り、監督としては目立った成績を残していない点だ。クラブレベルでは、ラ・リーガのバルサとバレンシアを率いた経験を持ち、プレミアリーグではサウサンプトンとエバートン、その他にもベンフィカ、アヤックス、PSV、フェイエノールトなどを指揮しており、オランダ代表を率いるのもこれが二度目だ。その長い監督キャリアの中で、全く結果を残していないわけではないが、最近は尻すぼみの印象が否めない。
ドイツやオランダの出身者は、ストレートな物言いをする傾向が強いとスペインでは言われている。バルサ1年目のイルカイ・ギュンドアンが、チームメイトに対して苦言を呈し物議を醸したのはその好例だ。しかし、クーマンのそれには、粗野で好戦的なイメージが付きまとう。
まだ青年監督だった頃、アヤックスでエジプト人FWのミドと衝突し、バレンシア時代にはサンティアゴ・カニサレス、ダビド・アルベルダ、ミゲル・アンヘル・アングーロという重鎮3人を飼い殺しにしてクラブを混乱に招いた。陽気なキャラで知られるホアキン・サンチェスですら、当時のことを思い出したくないのか、「クーマンとは挨拶をかわしたくない」と公言してはばからない。バルサでもルイス・スアレスを電話1本で退団に追い込んだことは記憶に新しい。ミラレム・ピャニッチやリキ・プッチも、彼の下では冷や飯を食わされ続けた。
そして今回のエピソードだ。スペイン紙『エル・パイス』のラディスラオ・ハビエル・モニーノ記者も、「踏み込んではいけない一線を越えた」と指摘する。確かに、ただでさえショックを受けている選手に対し、「自分から転んでボールを失っていた。だから何か手を打たなければならなかった。彼はボール扱いが上手いという評判のはずなんだがね」という試合後のコメントには配慮の欠片も感じられない。
モニーノ氏はその記事内で、オーストリア戦後、クーマンの言動をきっかけにチーム内の雰囲気が乱れたため、重鎮のひとりのフィルジル・ファン・ダイクが音頭を取ってお互いの意見をぶつけ合い、選手間の不満の解消に努めたと伝えている。
ASのガビロンド記者は、「クーマンは行く先々で敵を作っている。まるでいつもの赤ら顔の陰に、粗野な軍曹キャラが潜んでいることを強調しなければならないかのように。(フェールマンに)投げかけた言葉からは、モラハラ上司と傷ついた部下という構図が垣間見える。上の者が下の者に最もしてはいけない行為だ」と畳みかける。
オランダは2日、ルーマニアに3-0で快勝し、準々決勝に駒を進めた。クーマンは非情に徹して結果を追い求めている。しかし、その度が過ぎた言動を疑問視する声も数多くあがっている。
文●下村正幸
【動画】EURO2024決勝トーナメント1回戦、ルーマニア対オランダのハイライト!
EURO2024のグループステージ第3節、オランダ対オーストリア戦の35分に起きたこの出来事に噛みついたのが、スペイン紙『AS』の看板記者、アリツ・ガビロンド氏だ。
「クーマンは自分自身のキャラクターに飲み込まれてしまったようだ。あるいはこれこそが、彼が年齢を重ねる中で自ら探し求めた場所であり、たどり着いた結果なのか。それとも、ただ自分が作った説教壇から他人を見下したいだけなのか」と、「クーマン、問題の中の問題」と銘打たれたコラムは、冒頭から容赦がない。
ガビロンド記者が指摘するのは、クーマンがいまだにバルセロナをクラブ史上初の欧州王者に導く決勝FK弾を叩き込んだ現役時代(1991-1992シーズン)の威光に頼り、監督としては目立った成績を残していない点だ。クラブレベルでは、ラ・リーガのバルサとバレンシアを率いた経験を持ち、プレミアリーグではサウサンプトンとエバートン、その他にもベンフィカ、アヤックス、PSV、フェイエノールトなどを指揮しており、オランダ代表を率いるのもこれが二度目だ。その長い監督キャリアの中で、全く結果を残していないわけではないが、最近は尻すぼみの印象が否めない。
ドイツやオランダの出身者は、ストレートな物言いをする傾向が強いとスペインでは言われている。バルサ1年目のイルカイ・ギュンドアンが、チームメイトに対して苦言を呈し物議を醸したのはその好例だ。しかし、クーマンのそれには、粗野で好戦的なイメージが付きまとう。
まだ青年監督だった頃、アヤックスでエジプト人FWのミドと衝突し、バレンシア時代にはサンティアゴ・カニサレス、ダビド・アルベルダ、ミゲル・アンヘル・アングーロという重鎮3人を飼い殺しにしてクラブを混乱に招いた。陽気なキャラで知られるホアキン・サンチェスですら、当時のことを思い出したくないのか、「クーマンとは挨拶をかわしたくない」と公言してはばからない。バルサでもルイス・スアレスを電話1本で退団に追い込んだことは記憶に新しい。ミラレム・ピャニッチやリキ・プッチも、彼の下では冷や飯を食わされ続けた。
そして今回のエピソードだ。スペイン紙『エル・パイス』のラディスラオ・ハビエル・モニーノ記者も、「踏み込んではいけない一線を越えた」と指摘する。確かに、ただでさえショックを受けている選手に対し、「自分から転んでボールを失っていた。だから何か手を打たなければならなかった。彼はボール扱いが上手いという評判のはずなんだがね」という試合後のコメントには配慮の欠片も感じられない。
モニーノ氏はその記事内で、オーストリア戦後、クーマンの言動をきっかけにチーム内の雰囲気が乱れたため、重鎮のひとりのフィルジル・ファン・ダイクが音頭を取ってお互いの意見をぶつけ合い、選手間の不満の解消に努めたと伝えている。
ASのガビロンド記者は、「クーマンは行く先々で敵を作っている。まるでいつもの赤ら顔の陰に、粗野な軍曹キャラが潜んでいることを強調しなければならないかのように。(フェールマンに)投げかけた言葉からは、モラハラ上司と傷ついた部下という構図が垣間見える。上の者が下の者に最もしてはいけない行為だ」と畳みかける。
オランダは2日、ルーマニアに3-0で快勝し、準々決勝に駒を進めた。クーマンは非情に徹して結果を追い求めている。しかし、その度が過ぎた言動を疑問視する声も数多くあがっている。
文●下村正幸
【動画】EURO2024決勝トーナメント1回戦、ルーマニア対オランダのハイライト!
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