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アンス・ファティ、ペドリ、ガビに続いて新星ベルナルも…バルサで相次ぐティーンエージャーの負傷「そこにいるのは未成年者であることを忘れてはならない」

下村正幸

2024.09.05

開幕からバルサでスタメンに名を連ね、好プレーを見せていた17歳のベルナル。(C)Getty Images

 開幕4連勝と好スタートを切ったバルセロナに暗い影を落としたのが、3節のラージョ・バジェカーノ戦でのMFマルク・ベルナルの負傷だ。プレシーズンに頭角を現わした長身で左利きの17歳。開幕スタメンを勝ち取り、試合ごとにパフォーマンスを高め、長年のバルサの課題だったセルヒオ・ブスケッツの後釜がついに見つかったと思われた矢先の出来事だった。

 左膝の前十字靭帯断裂に加えて、外側半月板も損傷。診断結果が発表されるや「今シーズン絶望」という見出しが各メディアに並んだ。もちろん、戦力面でも大きな痛手だが、このニュースの衝撃度をさらに大きくしているのが、近年バルサで若手選手の怪我による長期離脱が相次いでいる事実だ。

 2020年のアンス・ファティを皮切りに、2021年のペドリ、昨年のガビ、そして今年1月のアレハンドロ・バルデに続くアクシデントだった。ここまで同じ現象が続くことで、現地では主に10代の選手を継続的に起用することへのリスクマネジメントの必要性を訴える声が上がり始めている。スペイン紙『スポルト』のディダク・ペイレット記者もそのひとりで、次のように見解を述べている。

「ベルナルの負傷は、バルサという要求度の高いクラブで、世代交代を急ぎすぎることの危険性を浮き彫りにしている。アンス・ファティやガビ、バルデも重傷を負った。そのほとんどが原因をひとつに絞ることができないため、議論の余地はある。たとえばガビがそうだったように、靭帯の損傷は、偶発的な状況で起こることが多い。しかし専門家は、負傷が起こった背景を分析する必要があると説明している。ベルナルの場合も、試合は後半アディショナルタイムに突入し、疲労はピークに達していた。ボールを奪おうとしたときの体勢は、試合開始直後のそれとはおそらく違っていただろう。17歳のベルナルは、開幕から3試合連続で先発出場していた。彼の負傷は、若手の起用を急ぎすぎることの危険性を示唆している」
 
 若手の育成においては、実戦経験を積ませながら成長させる点にウェイトが置かれがちだ。しかしペイレット氏は、リスクをコントロールしながら起用するという、長期的視点も併せ持つ必要性を強調する。

「成長を促すだけではない。監督にとってその時、必要な戦力であっても、起用を見送るタイミングを見極める判断も重要になってくる。将来のプロジェクトの根幹を担うべき存在という点も意識しなければならない」

 長年バルサを追い続けているベテランジャーナリストのリカルド・トルケマダ氏も、今回のベルナルの件を教訓にする重要性を強調する。

「彼らはプロの世界に飛び込んだばかりのティーンエージャーで、特別な保護が必要だ。焦りは禁物。いくらフットボーラーとして優秀で、プレーしている姿からはそう見えなくても、そこにいるのは未成年者であるということを忘れてはならない」

 スペイン紙『AS』の前編集長、アルフレッド・レラーニョ氏によると、1960年代初め、ラ・リーガではフベニール(U-17~U‐19)に相当する年齢の選手を試合で起用するには、スペインサッカー連盟に所属するドクターの許可が必要だったという。ベルナルの怪我は、低年齢化が加速度的に進行している今日のサッカー界への警鐘となったことは確かだ。

文●下村正幸

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