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バルサの10番アンス・ファティ、新指揮官フリックの存在を希望に復活のロードへ…現地メディアは“10月の新戦力”と期待!

下村正幸

2024.09.19

アンス・ファティは再び輝きを取り戻すことができるか。(C)Getty Images

 若手が次々と台頭しているバルセロナにおいて、この選手が復活すればまさに鬼に金棒といえる存在がアンス・ファティだ。今やすっかりラミネ・ヤマルにそのお株を奪われた格好だが、リオネル・メッシの後釜と当初目されていたのがファティだった。実際にメッシ退団後、彼は背番号10を継承している。それほどデビュー当初に見せていた得点力、爆発力は鮮烈だった。

 しかし2020年11月の左膝半月板の損傷を境に、すべての歯車が狂ってしまった。復帰と故障を繰り返し、持ち味のひとつだった爆発力を失うとともにドリブルのキレが低下。カットインからのシュートという十八番がなかなか決まらなくなり、得点ペースが極端に落ちた。

 レジェンドのシャビが監督に就任しても、レンタルでプレミアリーグのブライトンに新天地を求めても、状況は変わらなかった。むしろ好転するどころか、怪我を繰り返すたびに躍動感を失い、期待値はますます下がっていた。

 今シーズンも非常に厳しい立ち位置に置かれてのスタートだった。彼のたったひとつの希望は、もはや信頼を回復するのが難しくなっていたシャビからハンジ・フリックに監督が交代したこと。スペイン紙『スポルト』は、クラブ内ではレンタルはおろか完全移籍での売却を推す声も上がる中、新指揮官はアメリカツアー中の実戦でテストしたうえで最終決断を下す考えだと報じていた。ファティはチャンスをモノにしようとトレーニングに励み、その真剣に取り組む姿勢にフリックは好印象を口にしていた。しかしアメリカ出発直前に再び怪我に見舞われ、ツアーは不参加となった。

 もっとも運命はどう転ぶか分からない。この怪我によって目算が狂ったのは、クラブ側も同様だった。アメリカツアーでよほどのアピールを見せない限り、売却を想定して動いていたからだ。しかし怪我により、その青写真は崩壊。こうしてファティは期せずして残留することになった。怪我の功名である。
 
 ファティにとって追い風となる要素はいくつかある。第一に今夏、前線の補強が見送られ、ロベルト・レバンドフスキの確たるバックアッパーが不在であること。そして第二に新指揮官のフリックが、ファティをCFとして起用する構想を持っていることだ。当然、その背景にはコンディションの不安があり、レバンドフスキがそうであるように、守備面での負担を軽減させ、フィニッシュに専念させたい考えがある。

 そんな中、ファティに求められるのは、従来のウイングストライカーではなく、相手のブロックのギャップに顔を出してボールを呼び込み、素早く反転してフィニッシュに持ち込むCFらしいプレーだ。もともとボールへのミート力、シュートのバリエーションの豊富さ、一瞬の加速力には定評がある。

 すでにツアーを欠場する原因となった右足の裏の負傷は癒え、スペイン紙『AS』などは、同じく怪我で開幕に出遅れ、戦線復帰が近づいているフレンキー・デヨングやガビとともに"10月の新戦力"のひとりとして取り上げている。

 ファティはこれまで、コンディション不良に悩まされる中、周囲の期待を一身に背負い、大役を任され、もがき苦しんできた。現地の識者の間では、メッシの背番号10を継承させたクラブの決断は誤りだったと指摘する声は少なくない。しかし幸い今のバルサには、自身よりも注目を集める若手がわんさか育っている。まずはレバンドフスキのバックアッパー役を全うすることを目標に、復活ロードを1歩ずつ駆け上がっていきたい。

文●下村正幸

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