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「彼がピッチの上でビビることはない」2大エースを完全無視して決めた“エリア外からの低弾道シュート”に、マドリーの超新星エンドリッキの魅力が凝縮されている

下村正幸

2024.09.26

エンドリッキがシュツットガルト戦で決めたゴールは、マドリーのCL最年少得点記録に(18歳と58日)。(C)Getty Images

 チャンピオンズリーグ(CL)のリーグフェーズ第1節シュツットガルト戦、2-1とホームのレアル・マドリーの1点リードで迎えた後半アディショナルタイムだった。相手FKのこぼれ球を自陣で拾うと、60メートル近くドリブルで持ち上がったエンドリッキは、左にキリアン・エムバペ、右にヴィニシウス・ジュニオールがフリーで並走する中、ペナルティーエリア外から左足を一閃。コースは甘かったが、パワフルな低弾道シュートは慌てて飛びついた相手GKアレクサンダー・ニューベルの手を弾き、ネットに突き刺さった。

 この直前のプレーでエンドリッキは、絶好のシュートシーンを空振りで失敗していた。普通の18歳なら再度の失敗を恐れ、両翼どちらかのストライカーにパスを送っていただろう。守護神のティボー・クルトワは試合後、「あれも外していたら、殺していたよ」とブラックジョークを交えて語っている。

「エンドリッキの魅力が凝縮された一撃だった。彼がピッチの上でビビることはない。困難から逃げず、わずかなチャンスを逃さず、得点につなげるんだ」と語るのは、古巣パルメイラスでアカデミーのコーディネーターを務めるジョアン・パウロ・サンパイオ氏だ。

 このゴールを含めてここまで7試合に出場し、2得点をマーク。すべて途中出場ながら、確実に爪痕を残す働きを見せている。その活躍ぶりにスペイン紙『AS』の前編集長、アルフレッド・レラーニョ氏は「エンドリッキの左足には大砲が仕込まれている。アンチェロッティ監督は少しずつ我々にその凄さを見せてくれているが、彼の勢いを止めることはできない」と賞賛する。
 
 誰もが驚くのは、前述のシュツットガルト戦のゴールでも証明した、物怖じしないハートの強さだ。世界一要求レベルの高いマドリーの重圧に押しつぶされる選手は少なくないが、エンドリッキに関しては「ずっと前からこのクラブでプレーしているようだ」と、スペイン・スポーツ界のご意見番サンティアゴ・セグロラ氏も舌を巻く。

 ちなみにシュツットガルト戦の前日、エンドリッキはガブリエリ・ミランダさんとの電撃婚を発表していた。連戦の合間を縫ってさらっと結婚してしまうその姿に、『AS』のトマス・ロンセロ記者は、同紙のコラムで「時代は変わり、今どきの若者は、豪勢なパーティーを開くこともなくあっという間に結婚する。エンドリッキは月曜日(16日)の午前中にバルデベバス(マドリーの練習場)でのトレーニングに参加した後、ガールフレンドのミランダさんと結婚した。翌日にCLが控えていたため、SNSに愛情たっぷりの写真を投稿した後、夜は早く寝たようだ」と、現代っ子風の結婚に半ば呆れ気味だ。

 ボールをキープしてタメを作ったり、瞬間的なスピードで相手を振り切ったり、マーカーを背にしながらパスを受け、反転してシュートに繋げたり、得点以外の部分でも、随所に非凡なところを見せている。今週末のアトレティコ・マドリーとのダービーに向けて、現地ではスタメン待望論が上がっていた7節のアラベス戦も、結局は途中出場となったが、むしろ元来、若手の起用に慎重なアンチェロッティ監督がこうして継続的に試合で使い続けているのは、それだけ完成された選手と認めている証である。

 そのアンチェロッティ監督は18歳のエンドリッキについて、「無駄口を叩かず、ひたすら練習に没頭している。私が気に入っている点だ」と評する。並み居るスター軍団の中でも霞むことなく輝きを放ち続ける超新星が、欧州王者のマドリーに新風を吹き込んでいる。

文●下村正幸

【動画】エムバペ&ヴィニシウスを無視して決めたエンドリッキのCL初ゴール
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