海外サッカー

「彼の台頭はバルサの歩みのペースを変える出来事だ」決定的な違いを作り出すラミネ・ヤマル、マドリーOBも「世界最高の選手かもしれない」

下村正幸

2024.10.02

2年目のジンクスにハマるどころか、さらに凄みを増しているバルサのヤマル。(C)Getty Images

 ラ・リーガ第8節のオサスナ戦の前半は、ラミネ・ヤマルがいるかいないかで、バルセロナの攻撃がいかに変わるかを見せつけられた。

 ヤマルの代わりに右サイドに起用されたフェラン・トーレスも、スペイン代表の常連である実力者だ。しかし「バルサはヤマルがピッチにいないことで、ゴールへの明確な道筋を直接的に失うことになった。ジュール・クンデが後方に待機したままで、フェランがボールを受けても怖さはなく、オサスナはバルサの右からの攻撃に心配することなく守備を固めた」とフリージャーナリストのダビド・デ・ラ・ペーニャ氏が分析するように、バルサの右サイドの攻撃にはいつもの厚みも深みもなかった。

 後半、逆転勝利への一縷の望みを繋いだのもヤマルだった。58分に出場すると、88分にアナリストのアルベル・ブラジャ氏が「ヤマルのシュートはクレイジーだ。なんという規則性と一貫性でボールを蹴るんだ!」と驚嘆する一撃を左足で叩き込み、バルサは2-4と2点差に詰め寄った。

 かつてのリオネル・メッシがそうだったように、今や右サイドに開くヤマルにボールが渡るだけで何かを期待してしまう。この新星の台頭を『ラジオ・マルカ』の人気番組『ラ・ピサーラ・デ・キンターナ』のMC、ミゲル・キンターナ氏は、「バルサの歩みのペースを変える出来事だ。世界最高の選手が味方にいれば、どんなことが起きても、チームにプラスに作用するという考えが生まれやすくなる」と表現する。

 今シーズンのバルサは、相手ゴール前での怖さが増した。ゴール近くまでスムーズにボールが運ばれ、ポジションチェンジも活発で、ここぞという仕留めどころを逃さず得点に繋げている。そのフィニッシュの局面で決定的な違いを作り出しているのがヤマルだ。
 
 前述のダビド・デ・ラ・ペーニャ氏が着目するのは、ボールの受け方だ。「ヤマルについて私が魅了されていることの1つは、ボールを受ける角度と身体の向きをいとも簡単に調整できる点だ。常に次のプレーを意識して、角度と身体の向きを整えている。その点において名手だったメスト・エジルを彷彿とさせる」

 凄みを増しているのは攻撃だけではない。守備面でも、フィジカルの強化とともに貢献度を高めており、「ヤマルについて守備を改善する必要があると意見する連中は、その課題がどこにあるかを具体的に述べるべきだ。自陣まで戻って後方の選手を助ける動きをするという点では、まだまだ向上の余地はある。でも高い位置からプレスをかけてボールを奪いに行くという点において、あの年齢で彼ほどインテリジェンスと貪欲さを持って実行する選手を私はあまり見たことがない」と、大手ラジオ局『カデナ・セール』の海外サッカーの分析スペシャリスト、ブルーノ・アレマニー氏が強調する。

 ヤマルを評価する際には、「17歳ながら」という冠言葉が付けられることが多いが、アナリストのアルベル・モレン氏は「17歳のヤマルが世界最高の選手の一人であることか、それとも、17歳のヤマルが自分自身が世界最高の選手の一人であることを自覚しながらプレーしていることか、そのどちらがよりスキャンダラスなのか私には分からない」と自問自答する。

 レアル・マドリーOBのグティがヤマルについて「(現時点で)世界最高の選手かもしれない」と認めたことが話題になったが、前述のラジオ番組『ラ・ピサーラ・デ・キンターナ』の出演者のアドリアン・ブランコ氏も同調する。

「ヤマルは現在、世界最高の選手の一人のようにプレーしている。それが現実なのだから、我々もそのことを公言することへの恐れをなくさなければならない。第一線で巨大な違いを作り出し、決定的なプレーを見せる頻度も増している。彼は超が付くほどの選ばれた選手なのだ」

文●下村正幸

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